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世界で唯一の“家畜写真家”から見える世界「動物たちの感情が伝わってくる」

自身の屠殺体験から「いのち」を語る

タキミアカリ 家畜写真家――学校での講演ではどんな話を? タキミ:高校でお話させてもらった時は、ニュージーランドの子牛の話や、私自身が鶏の屠畜体験をした時の話をして、最終的には、生徒自身が自分の命についても考えてもらう授業です。思春期で精神的になって「死にたい」と軽く考えたり発言したりする生徒さんがいるということを、先生から聞いていて、自分の命についても考えて欲しいということでお話ししました。 ――家畜の命を考える屠畜、ご自身でも体験されたんですね。 タキミ:屠殺体験があると知った時は、やりたくない気持ちとやらなければいけないという思いが半々くらいでした。でも、自分自身も命ときちんと向き合うべきだと考えて体験することに決めました。 ――具体的にどうやって屠畜するんですか? タキミ:私の体験では、鉈で鶏の首を落とす方法でした。鶏も思ったより静かに目をつぶって待っているような感じだったんですが、最初は、鉈を持ったまま泣いてしまって屠畜することができませんでした。本当に苦しかったんですが、やらなければならないという意思で屠殺をさせてもらいました。その瞬間は罪悪感だけでしたね。 ――実際に自分の手で屠殺するとなると、そうですよね。 タキミ:ただ、その鶏を食べたときに気持ちが変わったんです。私の体の中に入って、鶏の命が私の命を繋いでくれているということを、「実感」が得られたので、やってよかったと思います。そうした話を高校生にさせてもらいました。

知る機会を動物たちの生命観から

――Youtuberがファミレスで、大量に注文をして大量に食べ残した動画が炎上した件がありました。これも、命の「実感」のなさからきていそうですね。彼らを批判する意見の多くも「作った人に失礼」というもので、命の話をしている人が極めて少ないことも個人的に気になりました。 タキミ:私もニュージーランドに行くまでは、食べ物の元が命であることを頭では理解していても、真剣に考えたことがなかったし、考える機会もありませんでした。現場と食がとても離れているので「考える機会がない」というのが、日本や多くの先進国の当たり前なんだと思います。機会のない世の中で、いかにそのきっかけを作るかが、私の使命だと思っています。 ――先日「クレイジージャーニー」(TBS系列)が、モルモットの屠殺の様子を放送して、賛否を呼びました。こうしたことも考える機会の一つになりますね。 タキミ:そうですね。ただ、私の経験からすると、映像と実体験は違うと感じます。映像だけだと残酷さしか伝わらず、遠ざけられてしまうこともあるかもしれません。だからこそ私は、生き生きとした家畜の写真を多くの方に見ていただくことで、入りやすい機会から興味を持っていただきたいと思っています。 タキミアカリ 家畜写真家
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「いのち」への感謝を世界へ
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Boogie the マッハモータースのドラマーとして、NHK「大!天才てれびくん」の主題歌を担当し、サエキけんぞうや野宮真貴らのバックバンドも務める。またBS朝日「世界の名画」をはじめ、放送作家としても活動し、Webサイト「世界の美術館」での美術コラムやニュースサイト「TABLO」での珍スポット連載を執筆。そのほか、旅行会社などで仏像解説も。

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『カチク写真展』
【場所】歯ART美術館 4階展示会場
〒761-0130 香川県高松市庵治町生ノ國3180−1
【開催期間】 2023年4月2日(日)- 5月28日(日)
【開館時間】10:00-17:00(年中無休)
【入館料】大人600円 小学生以下無料 65歳以上300円
【ギャラリートーク】3階イベント広場
5月21日(日)13:00-14:20 定員30名(予約制) 参加費300円(入館料込)
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