お金

利下げすれば必ず景気がよくなるわけではない?元日本銀行副総裁が解説

これ以上利下げできない日本はどうすべき?

 ただし、冒頭で述べたように日本は金利をこれ以上引き下げられません。コールレートはマイナス0.009%です(2月24時点)。わずかではありますが、借りる側が利子を“もらえる”のです。 さらに利下げすれば、民間への貸出金利も下がり、利益を上げられなくなり、銀行危機が発生する可能性があります。  需給ギャップがマイナスの日本では、景気を悪化させる利上げは論外ですが、銀行危機のリスクのある利下げもできないため、国債金利を低い水準に誘導する現在の金融政策を粘り強く続け、需要を引き上げようとしているのです。  この状況では、財政政策による需要拡大政策が必須です。その一つは減税です。  たとえば、消費税減税は消費を喚起します。公共施設を建設(公共投資)したり、教育費を援助したりすることも、需要を拡大させます。公共投資の増加は建設産業の生産を増やし、その従業員の賃金と消費を増やします。教育支援は援助を受けた人の教育サービス消費を増やします。  結局、日本の景気と暮らしをよくするためには、利上げせず、現在の金融緩和政策を粘り強く続けるとともに、減税などの積極財政政策による需要拡大政策が必要だということです。
次のページ
岩田の“異次元”処方せん
1
2
3
東京大学大学院経済研究科博士課程退学。上智大学名誉教授、オーストラリア国立大学客員研究員などを経て、’13年に日本銀行副総裁に就任。’18年3月まで務め、日本のデフレ脱却に取り組んだ経済学の第一人者。経済の入門書や『「日本型格差社会」からの脱却』(光文社)、『自由な社会をつくる経済学』(読書人)など著書多数

記事一覧へ
おすすめ記事