更新日:2023年03月22日 14:23
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朝ドラの聖地も消滅…3月末で運行終了するJR留萌本線の廃止区間を巡ってみた

③峠下駅

峠下駅

鉄道保安員の詰所でもあり、人の出入りは意外と多い

「千鳥式」と呼ばれる互い違いに設置された2面2線のホームを有する峠下駅(北海道留萌市)は、全区間単線の留萌本線で列車の行き違いが唯一可能な駅。沿線ではもっとも山深い場所に位置し、鉄道ファンから絶大な信頼を受ける秘境駅訪問家・牛山隆信氏が作成した『秘境駅ランキング2023年版』では全国64位。留萌本線では真布駅(45位)と並ぶ秘境駅として知られている。  留萌の中心部までは20キロ以上離れているがかつては近くに炭鉱があり、最盛期には約1000人が生活。ところが、1970年に閉山すると一気にゴーストタウン化。以前は駅前の道路沿いに民家が並んでいたが今は跡形もなく、集落自体が消滅してしまったようだ。  国鉄時代は貨物取扱駅でもあった峠下駅。現在は撤去されたものの貨物用の引き込み線もあり、駅構内の敷地は思った以上に広い。駅舎も留萌駅には劣るがそれなりの規模だ。昔は道内でよく見かけた平屋のトタン屋根で、築年数は不明だが1954年に一部改築したとの記録もある。少なくともそれより前に建てられたのは確実で、廃止後は取り壊すのではなく鉄道遺産として保存する方向で検討してもらいたいところだが……。

④幌糠駅

幌糠駅

北海道では定番の貨車を改装した駅舎

 宗谷本線などでもよく見かける改装した貨車を駅舎として設置する幌糠駅(北海道留萌市)。周囲を山に囲まれているが、数十世帯が暮らす比較的大きな集落だ。徒歩圏内にはJAの事務所に大学研究施設、商店や理髪店などもあった。  これだけ住民がいれば鉄道利用者もいそうだが、1日の平均乗車人数は0.8人(※17~21年/JR北海道調べ)。いくら車社会とはいえ、この数字は通学に利用する高校生すらいないということだ。  ちょうど散歩中の年配の女性がいたので話を聞くと、「まだ国鉄だったころはホームが2つあって、利用する人も今よりずっと多かったんだけどねぇ」と教えてくれた。調べたところ、現在の片側1面ホームと違って86年までは相対式の2面2線のホーム。峠下駅のように列車交換が行われていたらしい。  また、女性によれば、以前は皇室が所有する御料林(※現在は国有林)が近くにあり、幌糠駅はそこからから伐採した木材を搬出するために開業したとのこと。今の様子からは想像がつかないほど由緒正しい駅だったようだ。
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藤山駅と大和田駅
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フリーライター。鉄道や飛行機をはじめ、旅モノ全般に広く精通。3度の世界一周経験を持ち、これまで訪問した国は50か国以上。現在は東京と北海道で二拠点生活を送る。

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