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「“家族のため”と必死の思いで…」家族旅行を強制する父親が気付けなかったモラハラ思考。それは誰のための旅行なのか

A family lined up in front of a tent at a campsite

「家族のためを思って計画したのに……」と嘆く父親の本当のニーズとは/写真はイメージです

 DV・モラハラ加害者が、愛と配慮のある関係を作る力を身につけるための学びのコミュニティ「GADHA」を主宰しているえいなかと申します。  コミュニティではさまざまな悩みが共有されるのですが、共通するものがたくさんあります。その1つが「家族旅行」です。  今回はこの背景に迫りたいと思います。 「うちでは毎年、家族旅行をしてきました。家族全員で楽しめるように計画して、どんなに仕事が忙しくても『家族のため』と必死の思いで私もやってきました。なのに、妻は、ある日突然子どもを連れて家を出ていきました。ひどくないですか?」  困惑し憤りを隠せないNさん。DV・モラハラを知らない人が素直に聞けば、Nさんは、いわゆる「家族思いの良いお父さん」のように思えてしまいます。  しかし、多くの加害者・被害者の方々の話を聞いていくと、だんだんこういった話を額面通りに受け取ることはしなくなっていきます。同じことでも、立場が違えば全く異なった形に見えてくるからです。  そこで僕は、Nさんがどんな家族旅行をしていたのか尋ねてみました。Nさんは次のように答えてくれました。 「実際に色々な経験や体験のできる旅行ですね。やっぱり、自分で実際に行ったことがあるとか、したことがあると、教科書やテレビとかに出てくることにも興味・関心を持てると思うんですよね。せっかくの機会を活かせるよう、子どものためにも目いっぱい予定を詰め込んで、充実した旅行になるようにしていました」  そこで僕は次のように尋ねました。 「色々考えていたんですね。でも、子供が疲れちゃう時もありませんか?」

その家族旅行は、本当に家族のためなのか?

すると、Nさんは深いため息とともに、次のように答えてくれました。 「そうですね。家族が疲れて後の予定を休もうとされたりすると、本当にがっかりしますよ。こっちは忙しい中、時間もお金も割いてるのに……。家族はのんびりしたいっていうんですけど、せっかく観光地とかに行くなら定番のものは片っ端から見ておかないと勿体無いじゃないですか?」  そこで僕はもう一つ尋ねました。 「なるほど。そういう考え方もありますよね。ひょっとして、Nさんは家族が喜ばなかった時や不満を示した時に、『せっかくやっているのに生意気だ!』『喜ばないなら帰れ!』『誰の金でこんな贅沢できてると思ってるんだ』などと言ったことがありませんか?」  そう尋ねてみると、彼は驚いた様子で「え……どうして分かるんですか?確かに、そういう趣旨の発言をしたことはあります」と答えました。 「家族のために」「良かれと思って」と、振り返って自分の加害経験を語る加害者はとても多いです。 今回のケースでは、大きく2つの問題点があると考えられます。 1 Nさん本人の希望(ニーズ)だけで、旅行が計画されてしまっていること。 2 家族旅行の目的が「家族で楽しむこと」ではなく、「計画を達成すること」に変わってしまっていること。 それぞれ具体的に見ていきましょう。
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本当に家族のことを思っていれば家族のニーズを反映したはず
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