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木村拓哉の目が刺され…流血、凄惨シーンを妥協しない『教場0』は地上波ドラマの“常識”を覆した

刺されたシーンはドラマオリジナル

 遠野が刺されたシーンの描写も欧米ドラマを思わせた。遠野が犯人を追い、見失ったと思ったら、背後にいた。直後に首などを何度も刺され、血が噴き出した。持っていたビニール傘は真っ赤に染まった。  この作品は原作にほぼ忠実に進行しているが、2人が刺されたシーンはオリジナル。脚本を担当している君塚良一氏(65)と演出担当者がつくり上げたものだ。現場としてネオンライトが灯る無国籍風の雑居ビルが使われるなど映像が重視されていた。  輸出が視野にあるからではないか。そう考えると、遺体が生々しく、血が大量だったのも腑に落ちる。肝心の謎解き部分がしっかりしているから、欧米でも通用する可能性はある。

『教場0』の謎解きの質の高さとは

 どう謎解きがしっかりしているか。分かりやすいので第1話を振り返りたい。ホストクラブ経営者がタクシー内で同乗していた愛人のデパート店員に殺害された。ホストクラブ経営者は殺されることを予感し、車の走行ルートで愛人の名前を記していた。矛盾はない。しかも斬新だ。 「あり得ない」という声もあったようだが、だから謎解きなのである。使い古され、誰もが答えを知っているような謎解きでは意味がない。  ホストクラブ経営者の行為が実現不可能だったら一笑に付されても仕方がないが、走行ルートで名前を記すことは出来る。この男は地図アプリの入ったタブレット端末も持っていた。常識外のことを「あり得ない」と言い始めたら、アガサ・クリスティ作品はほとんどがそうなってしまう。ドラマの輸出が行われているのは知られている通り。最近ではフジ(制作・関西テレビ)「大豆田とわ子と三人の元夫」(2021年)が中国でヒットした。しかし、刑事・警察ドラマが海外で成功した例はない。  欧米が刑事・警察ドラマ大国である一方、日本作品はリアリティに欠け、往々にして謎解き部分に矛盾などのキズがあるからだ。仮に『教場0』の輸出が首尾良くいったら、初の快挙となる。
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視聴率からみる国内評価は?
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放送コラムニスト/ジャーナリスト 1964年生まれ。スポーツニッポン新聞の文化部専門委員(放送記者クラブ)、「サンデー毎日」編集次長などを経て2019年に独立。放送批評誌「GALAC」前編集委員

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