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木村拓哉の目が刺され…流血、凄惨シーンを妥協しない『教場0』は地上波ドラマの“常識”を覆した

視聴率を分析した国内評価の高さ

 そのためには、まず国内で実績を挙げなくてはならない。一部で視聴率不振といった声があるものの、第5話が終了した時点での視聴率の平均値は個人が約6・1%、世帯が約10・2%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)。実際には個人も世帯も連ドラで2位だ。  トップは第4話まで終了したTBS「ラストマン-全盲の捜査官-」(日曜午後9時)。こちらは個人約7・8%、世帯約13・0%である。 『教場0』は不振とは言えない。それどころか、T層(13~19歳の個人視聴率)とF1(20~34歳の女性の個人視聴率)の平均値は『ラストマン』より上で、目下のところトップなのだ。若い人に観られているのは新しさに好感を抱いているからではないか。 『教場』は指導部分も面白く、これも新しい。第1話と第2話は瓜原潤史(赤楚衛二)が指導された。瓜原は「人にやさしい警察官になりたい」と願うナイーブな好青年だった。しかし、それが捜査において裏目に出てしまうことも。捜査対象を傷つけたくないあまり、聴取をしないで済ませてしまうこともあった。これでは刑事として通用しないだろう。  このため、風間は瓜原をかなり厳しく指導したが、「やさしい警察官」であろうとする姿勢は否定しなかった。風間は瓜原に対し「君の欠点は長所でもある。それを忘れるな」と告げ、捜査1課に送り出した。捜査に情けは禁物だが、やさしさは忘れるなと説いたわけである。スペシャルドラマ版の『教場』(2020)『教場Ⅱ』(2021年)と同じく、人材育成ドラマとしても眺められる。

遠野は殉職か? 今後の見どころ

 第2話から第4話まで指導した隼田聖子(新垣結衣)は娘を育児放棄した過去が忘れられず、自己嫌悪に陥り、警察を退職しようとする。自分に誇れない過去がありながら、他人を追い詰めるのは精神的に辛かったはずだ。  退職を引き留めたのは風間。「子育てしながら警察で働く者としての意見書をまとめてくれ」と命じた。「辞めるな」とストレートには言わないところが風間らしさにほかならない。さらに少年係で児童虐待問題などに取り組むよう促し、「みんなが君を必要としている」と諭した。風間は厳しいが、鬼ではない。  第5話から指導されている遠野はどうなるのか。殉職し、2階級特進となってしまうのか。刑事になろうとしている理由が、高校時代に亡くなった親しい女子生徒との約束だったということもあり、殉職は悲し過ぎる。  もっとも、『教場0』はリアルな作品。それを踏まえると、ハッピーエンドとはならない気がする。遠野の殉職を予感させるのが、スペシャルドラマ版『教場』での風間の花の手入れ。遠野も花が好きだ。風間は遠野の形見を大切にしているのではないか。  風間の犯人に対する怒りにも注目である。 <文/高堀冬彦>
放送コラムニスト/ジャーナリスト 1964年生まれ。スポーツニッポン新聞の文化部専門委員(放送記者クラブ)、「サンデー毎日」編集次長などを経て2019年に独立。放送批評誌「GALAC」前編集委員
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