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国民が「景気回復策をやめるな」と言い続けることが、国を良くすることにつながる/倉山満

「景気回復はやめるな」との声に耳を傾けざるを得なくなった

 この時期に経済問題を取り上げなくて済むとは、どれほど幸せな事か。
植田和男日銀総裁

植田和男日銀総裁は4月28日、金融政策決定会合後の記者会見に臨み、2%の物価安定目標の実現に向けて大規模金融緩和を「粘り強く続けていく」と強調した 写真/産経新聞社

 4月27、28日に植田和男新日銀総裁が就任して初めての、政策決定会合が行われた。  本欄では当初から、「この人物を信用して良いのか? 監視せよ!」と言い続けてきた。声が届いたのか、各方面、特に政界で賛同者が有力となった。「金融緩和を軸とする景気回復策をやめるな!」との声に植田新総裁も耳を傾けざるを得なくなった。植田新総裁は、国会でも記者会見でも「景気回復はやめない」と何度も繰り返し、公約するに至った。  注目は、YCC(イールドカーブコントロール)とマイナス金利。YCCは国債の金利を上げないこと、マイナス金利は銀行が日銀に預けている利子をマイナスにすることだ。景気刺激には低金利がセオリー。そのいずれもやめないと言明している。

“植田総裁の大御心”にすがる妄想

 今後「どうなるか?」と聞かれたら、「9対1で景気回復策を続けるだろう」と答える。本当に景気が回復するかは、経済が生き物なので知らないが、方向性としてはそういうことだ。ただし私は、「10対0で全面的に博打をしろ」とは絶対に言わない。大事なのは「どうするか!」だからだ。我々国民が「ここで景気回復策をやめるな」と言い続けることが、日銀を正しく動かし、国を良くすることにつながるからだ。  ところが、「陛下の大御心」を妄想するドーしようもない連中が巣くっている。「債券村」の連中だ。「債券村」とは、金利で生活している人々の総称だ。黒田東彦前総裁の時代から、日銀は景気回復策を続けてきた。黒田前総裁は、「債券村」の人々がどれほど泣きわめこうが、「国民全体の景気回復が先だ!」と低金利政策をやめなかった。植田総裁も踏襲すると、宣言している。  ところが、「債券村」の人々は、植田新総裁の片言隻句を針小棒大に拡大して、「植田新総裁は金融緩和をやめてくれる!」と妄想している。たとえば、デフレ再突入の危険がある時に「躊躇なく大規模金融緩和を行う」とは言わなかった!のように。しかし無情にも植田新総裁は先日、「躊躇なく行う」と明言した。それでも「債券村」の人々は懲りずに理由をつけて「植田さんなら金融緩和を止めてくれる」と吹聴しているが、「植田総裁の大御心にすがる妄想」としかいいようがない。
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大日本帝国も「大御心」を妄想する愚か者に引きずられて滅びた
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1973年、香川県生まれ。救国シンクタンク理事長兼所長。中央大学文学部史学科を卒業後、同大学院博士前期課程修了。在学中から’15年まで、国士舘大学日本政教研究所非常勤職員を務める。現在は、「倉山塾」塾長、ネット放送局「チャンネルくらら」などを主宰。著書に『13歳からの「くにまもり」』など多数。ベストセラー「嘘だらけシリーズ」の最新作『嘘だらけの日本古代史』(扶桑社新書)が発売中

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