オッサンは死語を使うことをためらうな
―[「それ死語ですよ」の境界線]―
流行語と死語は、実は社会を映す鏡のような存在でもある。俗語研究の第一人者の米川明彦氏に両者と社会の関係について伺った。
「流行語は、その時代に適応した感覚的な意味の強い言葉。一般語として定着するのは、昭和9年の流行語の『パパ、ママ』などのごく一部のみで、100に一つ程度です。つまり流行語はその大半が死語となる運命にあるんです」
流行語にも死語になりやすいもの、なりにくいものがあるそう。
「言葉として意味のない、お笑い芸人の一発ギャグなどは、もっても半年程度。一方、『今でしょ!』のように、会話で使える場面が多いもの、汎用性が高いものは死語になりにくい傾向があります」
死語化にもさまざまな形がある。
「『せまい日本そんなに急いでどこへ行く』『モーレツ社員』などは、一定の時代、社会に適応して生まれた言葉。状況が変われば死語になります。『国鉄』『ちゃぶ台』『ご隠居さん』のように、存在自体の減少・消滅で言葉が死語になることもありますね。また差別語やマイナスの要素が強い言葉も死語になりやすい。『かわや』⇒『便所』⇒『お手洗い』⇒『トイレ』と言い換えが進むのはその一例です」
そして流行語になりやすく、かつ死語になりやすいのが若者語だ。
「若者語は会話を面白くするノリの言葉。ハズい、ムズいなどの省略語は、会話に楽しいテンポを加えます。ただ、若者が飽きたら使われなくなる。そして若者が飽きた頃に、使い始めるオジサンたちが出てくるんです(笑)。そもそも若者語は、顎や舌が自由に動く年齢層の言葉で、年配者が使いにくいのは当然。また、『ぶっちゃけ』『~みたいな』『~的には』などの若者語は、言葉自体が軽い。年配者はやはり洗練された言葉、常識のある言葉を使うのが自然です」
若者に合わせるよりも、世代に合った言葉を使うのが大事なのだ。
「言葉に世代差があるのは当然なので、オジサンたちが昔の言葉を使い続けるのは何ら問題ない。死語を使うと、『あー古くさ』と若者は言うでしょうが、うまく使えば笑いのネタにもなる。僕はベストをチョッキ、ベルトをバンドと言いますが、それだけで若者はウケますからね。言語感覚がズレていても損ばかりではないんです」
【米川明彦氏】
梅花女子大学教授。専門は俗語・聖書・手話研究。日本語関係の近著に『ことば観察にゅうもん』『集団語の研究〈上巻〉』など
取材・文/廣野順子(Office Ti+) 福田フクスケ 古澤誠一郎 安田はつね(本誌) イラスト/ミラクル沼尾
― 「それ死語ですよ」の境界線【7】 ―
―[「それ死語ですよ」の境界線]―
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