ライフ

「励ましたのに、相手が黙りこくってしまった」理由とは?間違えてはいけない“悩み相談”への対処法

悩みは必ずしも解決が必要とは限らない

 後日、Tさんがパートナーに聞いてみた結果を教えてくれました。 「パートナーに聞いてみたら、『ちょっと愚痴ってすっきりしたかっただけ』『疲れていたし、わかりきっている正論なんて聞きたくなかった』と教えてくれました。僕も疲れていて愚痴を聞きたくなかったから、アドバイスしたり、大した問題ではないことにして、一方的に話を終わらせようとしていましたが、それが良くなかったんですね」  悩みは、必ずしも解決が必要なことや、解決できることばかりではありません。  頭では何となくはわかっていても心がついていかないとか、そもそも何を話したいのか相手自身もよくわかっていないといったケースもあるでしょう。人間関係や組織的なことであれば、自分一人の努力で解決することは非常に困難です。  ただ、人間は、感情の動物です。 「それは大変だったよね。お疲れ様」 「相手のことを思ってやったことが裏目に出たら、『せっかくやったのに…』と落ち込んじゃうよね」  自分の感情を受け止められ、寄り添われることで、悩みは、(現象としては)解決できなくても、(感情的には)解消することもあります。  また、相手に話すことで自分の状況や気持ちを言語化し、整理することもできます。 「そんなことがあったんだ」 「こちらの話もろくに聞かず、一方的に言われても困るよね」  等、相談者にどんな悲しみや傷つきがあったのか、それを想像・尊重しながら、相手の気持ちをそのまま受け止め、相手の気持ちに寄り添うこと。  そして、井戸の水が枯れるくらいにまで、相手に安心して感情をとことん吐き出してもらうことが重要です。

アドバイスは相手から求められた場合にだけ行うものである

 もちろん、相談されたときに、一切アドバイスをしてはいけないと言っているわけではありません。まずは、相手が持っている感情を共有してもらい、相手の気持ちに寄り添うことが一番重要なのであり、アドバイスや応援は、その後に(相手からの求めに応じて)すればよいのです。  ただ、どうしても相手の相談に対応できる時間的・精神的リソースが限られている場合もあるでしょう。Tさんも、相談の際には「仕事が終わり疲れて帰ってきて……」と始めていました。  もしかしたら、そもそもTさんも労ってほしかったのかもしれない。疲れていて、休みたかったのかもしれない。それでも相手の相談を聞こうとしてできることをやったのに相手にはわかってもらえず……という悲しい負の連鎖が起きている可能性もあります。  そんなときは、 「ごめん。〇時までしか話を聞けないけど、大丈夫?」、「今はちょっと自分も仕事で疲れていて……。〇日なら、時間が取れるんだけどどうかな?」など、あらかじめ相手にそのことを伝えることも大切です。  持続可能な人間関係を構築し維持していくためには、相手だけでなく、自分自身のニーズも把握して(セルフ)ケアをしていくことが重要だからです。
次のページ
あなたの傷つきを無視して正論を振りかざす相手とは距離をおこう
1
2
3
DV・モラハラなど、人を傷つけておきながら自分は悪くないと考える「悪意のない加害者」の変容を目指すコミュニティ「GADHA」代表。自身もDV・モラハラ加害を行い、妻と離婚の危機を迎えた経験を持つ。加害者としての自覚を持ってカウンセリングを受け、自身もさまざまな関連知識を学習し、妻との気遣いあえる関係を再構築した。現在はそこで得られた知識を加害者変容理論としてまとめ、多くの加害者に届け、被害者が減ることを目指し活動中。大切な人を大切にする方法は学べる、人は変われると信じています。賛同下さる方は、ぜひGADHAの当事者会やプログラムにご参加ください。ツイッター:えいなか

孤独になることば、人と生きることば孤独になることば、人と生きることば

モラハラ、パワハラ、DV
人間関係は“ことば”で決まる


記事一覧へ
おすすめ記事