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ロッカー・吉川晃司(57)が俳優をする理由「ボクサーがプロレスのリングに立つ背水感」

『トリリオンゲーム』で見せた新たな役柄

トリリオンゲーム

『トリリオンゲーム』番組公式HPより

『トリリオンゲーム』で投資家の祁答院一輝を演じたことで、また役柄の幅が広がった。祁答院は主人公の若き起業家・天王寺陽(目黒連)と平学(佐野勇斗)の将来性を買い、応援する男なのだが、伊達男でノリが軽いのだ。重厚だった信長や西郷、財前とは大違いである。  もっとも、吉川によると、西郷役にも祁答院役にも共通項がある。いずれの役柄にも吉川自身の一部が投影されているという。 「演じる際、自分の本性や生き様の軸までは崩そうとはしない、むしろ役柄を己の方に引き寄せようとしています」(吉川)  確かに『八重の桜』での吉川版の西郷はそれまでの西郷像とはやや異なり、情の人という印象が濃厚だった。素顔の吉川に近い。イメージと合わぬかも知れないが、吉川は記者の近況や体調まで気にする気遣いの人。芸能人ではかなり珍しい。   また、照れなのか本人はあまり口にしないが、被曝2世ということもあって、原爆犠牲者の慰霊コンサートに参加したり、原爆の日に広島カープの始球式に登板したりしている。吉川のルーツは広島市の爆心地の近くにあった吉川旅館だが、原爆ですべて吹き飛ばされてしまい、今は広島平和記念公園になっている。  2011年3月の東日本大震災時も宮城県石巻市に入り、住民の困り事を聞いたり、自転車修理などをやったりした。被災地に約3週間入っていた。  その4カ月後の同年7月には元BOØWYのギタリスト・布袋寅泰(61)とのユニット・COMPLEXを21年ぶりに復活させ、大震災復興支援のチャリティライブ「日本一心」を東京ドームで行なった。音楽性の違いから袂を分かった布袋とのジョイントはファンのみならず音楽界も驚かせたが、大震災から半年も経たぬうちにドームでのチャリティライブを実現させたのも常識破りだった。

「最後は自分に帰るのだという姿勢で演じている」

 一方で、伊達男で軽い祁答院に近い吉川も存在する。素顔の吉川は祁答院と同じく、細かいことはほとんど気にしない。だから取材時にとやかく言われることもない。オフレコもなし。これも芸能人では少数派だ。  祁答院のような茶目っ気もある。取材中の吉川はよく冗談を口にする。笑いっぱなしで終わってしまう取材もある。修道高(広島市)水球部時代の武勇伝を笑顔で語ることもある。  何よりの茶目っ気はライブで見せるシンバルキックだろう。失敗したら大ケガをする怖れもあるにもかかわらず、ファンが期待するからやっている。サービス精神と遊び心なのである。 「役者さんたちのように良くも悪くも己を捨てて空っぽの状態から役柄になるようなことはない。最後は自分に帰るのだという姿勢で演じている」(吉川)  これが俳優・吉川の一番の魅力なのではないか。西郷も財前も祁答院も全て吉川の人格の一部が入っている。「何を演じても同じ」と言われる俳優や「どんな人格にもなれる」という俳優はよく聞くが、本人の人間性の一端を役柄に滑り込ませるという人は聞かない。だから、どんな役柄も吉川独特のものになる。
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『キングダム 運命の炎』では鍛え上げた肉体が躍動
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放送コラムニスト/ジャーナリスト 1964年生まれ。スポーツニッポン新聞の文化部専門委員(放送記者クラブ)、「サンデー毎日」編集次長などを経て2019年に独立。放送批評誌「GALAC」前編集委員

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