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ロッカー・吉川晃司(57)が俳優をする理由「ボクサーがプロレスのリングに立つ背水感」

『キングダム 運命の炎』では鍛え上げた肉体が躍動

キングダム 運命の炎

映画『キングダム 運命の炎』公式HPより

 もっとも、『キングダム 運命の炎』は例外。吉川の人格が投影されているかどうかは不明だ。おそろしく強い武将役なのだが、人間性がよく分からないのである。ただし、水球で鍛えられた肉体が生かされている。  この武将は大きな矛のような武器で兵士を次々と倒す。現実離れしているほど強いのだが、たくましい吉川が演じると、リアリティが生まれる。観れば分かるが、まるでサイボーグだ。  吉川と同時代を生きた50代以上でないと知らないかも知れないものの、そもそも吉川のデビューは歌と俳優が同時だった。歌は『モニカ』(1984年)、俳優は主演映画『すかんぴんウォーク』(同)である。  映画は若者向けの青春物語だった。当時は少子化ではなかったから、若者向け映画が今より遥かに多く、中高生が映画館に詰めかけた。  この映画は吉川を思わせる青年が広島から単身上京するところから始まる。吉川が泳いでやって来て、東京湾から上陸するのが若者向け作品らしかった。多くの観客は不思議に思わなかった。  その青年がミュージシャンとしての成功を目指す。友情や挫折も描かれた。この演技で吉川はブルーリボン賞新人賞を受賞した。当初から演技力には定評があった。

吉川に影響を受けたあの名優も

 作品の影響を受けて上京を志した中高生は少ない数ではなかったようだ。その1人が名バイプレイヤー・津田寛治(57)。作品を観た後、俳優になるため、福井市から上京したと語っている。今になって考えると、日本に勢いがあり、今より夢が持てた時代だった。  あれから39年。吉川は1987年から音楽に専念していたが、00年から再び俳優もやるように。それから23年が過ぎようとしている。俳優としての円熟期に入っていると言っていいのではないか。  吉川流の演技により、再び誰かの生き方を変えられるか。  吉川は2日にライブDVD『KIKKAWA KOJI LIVE 2022-2023 “OVER THE 9”』をリリース。4日からは『トリリオンゲーム』の撮影を続けながら、並行してツアー『Guys and dolls』に入る。コーラスとして親しい大黒摩季(53)が参加する。<取材・文/高堀冬彦>
放送コラムニスト/ジャーナリスト 1964年生まれ。スポーツニッポン新聞の文化部専門委員(放送記者クラブ)、「サンデー毎日」編集次長などを経て2019年に独立。放送批評誌「GALAC」前編集委員
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