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日本国民の税金が「テロに使われている」…パレスチナへの支援金“2,400億円”の行方とは

国連の学校はテロ拠点に変えられた… ハマスが実質支配しているUNRWAガザ支部の実態

中東問題再考

※画像はイメージです

 UNRWAの疑惑の一つは、この五つの支部の一つであるガザ支部が実質的にハマスに支配されているのではないかという問題です。  五つの支部にはそれぞれ労働組合が複数存在しており、2012年の労働組合選挙ではガザ支部の教員組合の11議席すべてと、職員・サービス部門の組合の16議席のうち14議席にハマスのメンバーもしくはシンパが選出されました。  ハマスは労組を支配することでUNRWAガザ支部を支配しているのではないかと指摘される所以です。  UNRWAには、ハマスのメンバーや支持者を縁故で雇用している疑惑も持ち上がっています。  2021年6月には、ハマスの機嫌を損ねる発言をしたUNRWAガザ局長が脅迫され、本部に呼び戻されました。  ハマスによるガザ支部支配を裏付けるかのように、ガザのUNRWA学校ではハマスのサマーキャンプの募集が行われたり、ハマスのトンネルや武器が発見されたりしています。  2021年5月にUNRWAは、ガザでUNRWAが運営する学校の下にハマスのトンネルを発見したと発表しました。  2017年にもUNRWAは、二つの学校の下でトンネルを発見しています。  2015年に公開された国連の調査は、ハマスがUNRWAの三つの学校を武器庫として利用していたと結論づけました。  これを受けてイスラエルのダノン国連大使は、ハマスによって国連の学校はテロ拠点に変えられた、ハマスは子供を人間の盾として利用していると非難しました。

各国がUNRWAへの資金提供を問題視

中東問題再考

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 2021年6月には独紙「ビルト」が、UNRWAの学校で使用されている教科書について欧州委員会が依頼した調査の報告書をリークし、多くの教科書がパレスチナ解放闘争を「革命」や「ジハード」と呼び、マシンガンを持った5人の覆面男の写真が「パレスチナの革命家」というキャプション付きで掲載されていること、1978年に13人の子供を含むイスラエル人38人を殺害したテロ集団の一人であるパレスチナ人女性ダラール・ムグラビーがロールモデルとして何度も取り上げられていること、「ユダヤ人が預言者ムハンマドを殺そうとしたこと」がディスカッションのテーマとされているなど、古典的な反ユダヤ主義の扇動が散見されること、多くの地図では国家としてのイスラエルが消し去られていることなどを明らかにし、EUがUNRWAに資金提供していることを問題視しました。  同年10月には英政府が、パレスチナ自治区の教育と医療従事者への資金提供を停止すると発表しました。  NGO「学校教育における平和と文化的寛容を監視する研究所(IMPACT-se)」によると、英国は過去5年間に約1億3700万ドルを費やし、パレスチナ自治区の教育従事者に報酬を支払ってきたと推定されています。  2021年8月にはジュネーブに拠点を置くNGOのUN Watch が、100人以上のUNRWAの教育従事者や職員がソーシャルメディア上で暴力やテロリズム、反ユダヤ主義を公然と扇動しており、これは差別や反ユダヤ主義を一切許容しないというUNRWAの宣言に違反していると報告しました。  こうした事例としては、ガザ地区にあるUNRWA学校の数学教師ナヒード・シャアラウィーがヒトラーのビデオと言葉をシェアし、これらは「思考と心を豊かにし啓発する」と投稿したことや、西岸地区のUNRWA学校の教師ホスニー・マスリーが、ユダヤ人が世界を支配し、コロナウイルスを作り、イスラム教を破壊しようとしているという反ユダヤ主義的な陰謀論を投稿したことなどが挙げられています。  UN Watchは113件の事例すべてが、幼い子供たちにまで暴力や憎悪を賛美したり、助長したりするものだったとし、「我々はUNRWAに資金を提供している各国政府に対し、何世代にもわたってユダヤ人を憎み、暴力的に攻撃することを教えるという悪循環を止めるための行動をとるよう要請する」と呼びかけました。 <飯山陽 構成/日刊SPA!編集部>
1976(昭和51)年東京生まれ。イスラム思想研究者。麗澤大学国際問題研究センター客員教授。上智大学文学部史学科卒。東京大学大学院人文社会系研究科アジア文化研究専攻イスラム学専門分野博士課程単位取得退学。博士(文学)。『ニューズウィーク日本版』、産経新聞などで連載中。著書に『中東問題再考』『イスラム教再考』(以上扶桑社新書)、『エジプトの空の下』(晶文社)など。
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中東問題再考

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