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主要先進国はなぜパレスチナへの資金援助を見直したのか。“間接的なテロ支援”とする主張の背景

岸田首相以外のG7首脳「ハマスの行為はテロ」だと非難

『ハマス・パレスチナ・イスラエル』 さて、先に紹介した日経新聞の記事にはこうあります。 〈バルヘリ氏は「イスラエルや市民に対するテロの規模や残虐性は転換点だ。通常通りにはできない」と強調した。EUはこれまで低所得家庭の生活支援などの名目で、パレスチナ向けに援助資金を提供してきた。   EUの外相にあたるボレル外交安全保障上級代表は同日、10日に緊急のEU外相会合を開催すると発表した。ボレル氏はハマスが野外音楽イベントの会場を襲撃したことなどを強く非難。Xに「無実の民間人を標的にすることは決して正当化できない」と投稿した。〉  欧米諸国では、ハマスの大規模テロ攻撃を受け、ハマスの残虐性は絶対に許さないという論調が強まりました。  そのことは、日本の岸田首相以外のG7首脳が、口を揃えてハマスの行為を「テロ」だと非難し、イスラエルの立場に寄り添うと宣言したことからもわかります。  そして、彼らは、ただそう宣言しただけではない。アメリカは軍事支援を開始しました。EUはパレスチナ支援を見直しはじめました。イスラエルにいる自国民を救出するための作戦を展開している国ももちろんあります。

テロという言葉を使わなかった岸田首相

 一方、日本はどうか?  岸田首相はハマスの行為をテロだと非難することもせず、主権国家であるイスラエルに「自制」を要求する声明を出した(2023年10月)。  在イスラエルの日本大使館は、在留邦人に電話をかけて安否確認をし、サイレンが鳴ったらシェルターに行け云々と「アドバイス」しただけです。  そんなもの、イスラエルに住んでいる人なら今更言われるまでもなくみんなわかっているし、日常的に実践していることです。  日本は、テロと戦うという意思も示せない。  これはつまり、岸田政権はもし日本がテロ攻撃に遭い日本国民が犠牲になっても「自制」しますという、そういう意思表示でもあるわけです。 <文/飯山陽 構成/日刊SPA!編集部>
1976(昭和51)年東京生まれ。イスラム思想研究者。麗澤大学国際問題研究センター客員教授。上智大学文学部史学科卒。東京大学大学院人文社会系研究科アジア文化研究専攻イスラム学専門分野博士課程単位取得退学。博士(文学)。『ニューズウィーク日本版』、産経新聞などで連載中。著書に『中東問題再考』『イスラム教再考』(以上扶桑社新書)、『エジプトの空の下』(晶文社)など。
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