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「80歳で20本の歯を残そう」8020運動の“意外な落とし穴”。表彰されたのに「食べ物が噛めない」

歯の健康のためには“8020”よりも“keep28”を目標に

歯医者の施術イメージ

※写真はイメージです(Photo by AdobeStock)

患者さんの中には歯がどんな状態でも保存に努めてほしいという声が多々聞かれます。これは20本の歯を残さなくてはいけないという思いからです。 また、「いま歯を抜いたらあと何本の歯が残りますか? 8020までセーフですか?」といった質問をいただくこともあります。 しかし、噛むのに機能せず、抜くしかない状態の歯を多く残して8020を達成しても、みなさんのQOLは向上しない、20本あればセーフではない、ということがおわかりいただけたのではないでしょうか。 “8020”は決して8本の歯を失っていいという意味ではないのです。歯を1本失うことでドミノ倒しのように次々と歯を失うリスクを抱えています。 当院にいらっしゃった患者さんで、お口の中に20本の歯が残っており“8020”を達成している状態ではありますが、残っている歯もほとんどが歯周病の影響で揺れてきており、入れ歯を支えている歯も痛みが出てきていました。 歯みなさんは、このようなお口の状態で80歳を迎えたいでしょうか。きっと誰しもが生まれ持った自分の歯がしっかりと揃っている状態で、歯ごたえのあるものを最後まで自分の歯で噛み締めたいと思うはずです。 生まれ持った自分の目や耳、手足の指を失いたくないのと同じように、歯も1本も失ってはいけないのです。予防を推奨する歯科医師たちは、“8020”ではなく、生まれ持った健康な歯を28本一生涯保つことを目標とした “keep28”を掲げています。 ロゴこれは高い目標ではありません。みなさんも今日から自分の歯を守るために、毎日の歯磨きの見直しや歯医者での検診、正しい生活習慣への改善など、歯の疾患予防を行うための健康意識を高めて生活してみましょう。 <文/野尻真里>
一般診療と訪問診療を行いながら、予防歯科の啓発・普及に取り組んでいる歯科医師です。「一生涯、生まれ持った自分の歯で健康にかつ笑顔で暮らせる社会の実現」を目標にメディアで発信をしています。X(旧Twitter):@nojirimari
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