ライフ

“空き家のまま十数年放置”した実家が「ゴミ屋敷」状態に。人気小説家が直面した“実家じまい”の現実

土壇場で400万円の買い取りの話が無効に

私の実家が売れません!

高殿円さんの著書『私の実家が売れません!』(エクスナレッジ)

――それで手始めに、ご当地の不動産仲介業者に依頼したのですね。著書では、首尾よく買い手が現れ、しかも400万円の値がついてと、上々の滑り出しに見えますが、落とし穴があったと……。 高殿:駅から歩いて30分といっても、バスは通っているし、ショッピングモールもできて、若い家族も結構住んでいるエリアです。空き家でも、売れないことはないと考えていました。  買い手の方は、更地にして新たに家を建てるつもりだったそうです。売買契約書を作って、引き渡し日まで決まってから、不動屋さんから連絡がきました。不動屋さんは、「接道義務を満たしていない再建築不可物件」と判明したから、売買できないと言ってきたのです。  法律で、公道に接していない家は、再建築つまり建て替えがダメなのです。これを接道義務といいます。実家の目の前にはちゃんと道路が通っているのですが、事情があってその部分だけが私有地だと、土壇場でわかりました。公道には1ミリも接していないのです。  それで、購入の話は流れてしまいました……。

片付け業者が80万円を提示するほどモノだらけ

――法律の規定で建て替えは無理。実家は、そのままにするしかないのは厳しいですね。打開策はどう考えましたか? 高殿:伯父は、倒れて病院にかつぎこまれ、一度も家に帰れないまま亡くなりました。なので、家の中は住んでいたときのまま。以来、親族の手も触れることなく、15年間以上が過ぎていました。  ちょうど世の中はコロナ禍で、旅行とかしにくいうちに、片付けだけでもやっておこうと決めました。足を踏み入れると、家の中は物品がものすごくありました。車に載せて、ゴミ処理場に搬入できるレベルではないです。  古びたブラウン管テレビが3台、冷蔵庫、エアコン、給湯器など、リサイクル料のかかる家電が、めっちゃ多かったのです。調理器具なんかも、ホットプレートが何個あるねんみたいな状況。そこで、何社かの片付け業者に見積もりをお願いしたら、高い業者で80万円、安いところでも40万円もかかるそうで……。
次のページ
「ジモティー」で案内したら問い合わせが殺到
1
2
3
ライター、写真家、ボードゲームクリエイター。ちょっとユニークな職業人生を送る人々が目下の関心領域。そのほか、歴史、アート、健康、仕事術、トラベルなど興味の対象は幅広く、記事として書く分野は多岐にわたる。Instagram:@happysuzuki

記事一覧へ
おすすめ記事