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“空き家のまま十数年放置”した実家が「ゴミ屋敷」状態に。人気小説家が直面した“実家じまい”の現実

「ジモティー」で案内したら問い合わせが殺到

高殿円

とにかくモノが多い高殿さんの実家

――それで、一番安い業者にお願いしたのですか? 高殿:売却も不可能に近い家に、それだけのお金はかけたくないというのが本音でした。そのとき、ネット上で告知して引き取ってもらうという手段をひらめきました。  最初は「Yahoo! オークション」での出品を考えました。でも、発送する手間暇もないので、売ります・あげますの掲示板サイト「ジモティー」を活用することにしました。家まで来て、家具からなにから、全部無料で持っていってください、と。  正直欲しがる人がいるかと思いながらの、ダメ元の投稿でした。ところが、最初の日だけで何十件もの問い合わせがあって、驚きました。

コンテナに満載して海外に売れる意外なモノ

――提供する側にはゴミ同然であっても、宝の山とみる人も結構いたということですね。どういった人たちが引き取りに来られたのですか? 高殿:連絡のあと一番先に来たのは、商店街の古着屋さんでした。伯父は、バブル時代にクラブを経営していた人なので、所有する服が割と高級品だったのです。それで、30年経ってもふつうに着られるということで、喜んで車に積んで持ち帰っていきました。  そのあとは、若い夫婦がダイニングの家具一式。古さはありますが、DIYの技で新品同様に変えられるとか。  それから、たくさんある食器類ですね。昭和レトロなものが、実はブームになってきているそうで、ニーズは割とありました。また、こうした食器は、コンテナに満載して、インドネシアとかに出荷するとお金になるそうです。ほかにも、どう見ても使い道のなさそうなモノを、喜んでもらう人も。 「ジモティー」の威力とともに、世の中にはいろいろなニーズがあるのだなと、つくづく実感しました。 <取材・文/鈴木拓也> 【高殿円】 兵庫県生まれ。2000年『マグダミリア三つの星』で第4回角川学園小説大賞奨励賞を受賞しデビュー。13年に『カミングアウト』で第1回エキナカ書店大賞を受賞。主な著作に『トッカン』シリーズ、『上流階級 富久丸百貨店外商部』シリーズなど。漫画原作も多数手がけている。小説以外の最新の著作は『私の実家が売れません!』(エクスナレッジ)。また、自費出版として『98万円で温泉の出る築75年の家を買った』がある。 X:@takadonomadoka note:https://note.com/takadonomadoka
ライター、写真家、ボードゲームクリエイター。ちょっとユニークな職業人生を送る人々が目下の関心領域。そのほか、歴史、アート、健康、仕事術、トラベルなど興味の対象は幅広く、記事として書く分野は多岐にわたる。Instagram:@happysuzuki
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