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築75年“再建築不可”の実家が50万円で売れた?小説家が体験した“実家じまい”の対策とコツ

「ジモティー」で家が売れる?

私の実家が売れません!

高殿円さんの著書『私の実家が売れません!』(エクスナレッジ)

――なるほどー。「ジモティー」で不動産の売買もできたなんてびっくりです。 高殿:本格的に売るには、宅建の資格を持っているなど要件があるようですが、基本的に個人での売買も可能なのです。そこで、「祖父の家を50万円で売りたいと思っています。ご興味がある方は連絡ください」という、ダメ元の軽いノリで投稿しました。  でも、投稿した日の夜には続々と通知がやってきて、驚きました。しかも、面白かったのが、購入したいという理由がさまざまだったことです。子供ができて実家のそばで暮らしたいという夫婦や、倉庫を兼ねたセカンドハウスにしたいという人など。  いちばん印象的だったのは、大学の建築学科の学生さん。自分たちの手で修繕し、NPOを立ち上げて、学生寮として活用したいとのことでした。学生でも買える価格で売り出したのは、正解だったと思いました。  打診してきた人たちに、見学日のスケジュールなどやりとりしていたある日、本当にびっくりすることが起きました。

クレカで実家を購入する人が登場して…

――それは、実家の隠れた問題が明るみになったとかですか? 高殿:その逆で、ジモティーのクレカ決済機能で、いきなり50万円を支払って購入した人がいたのです。ジモティーの仕組みをわかっていない高齢者が、間違ってポチったのかと、慌ててキャンセル扱いにしました。  そしたら、その方から連絡があって、「あなたの家を買いたい」と。いったいどんな人かと、興味もあってやりとりを重ねたら、結構なお金持ちだったのですね。  聞いてみると、バブルの時代、できて間もない神戸ポートアイランドで酒屋の商売を始めたそうで、しがらみもない土地で儲かったと。バブルが崩壊して、商売もうまくいかなくなったとき、縁あって商店街で酒屋を再開。今は、何軒ものセカンドハウスとクルーザーを所有して、セミリタイア生活をしているそうです。  それほどのお金持ちが、なんでボロ屋を欲しがるのかと不思議に思いました。現地で待ち合わせて、内見してもらったのですが、家の価値を見る力のある人で、再建築不可物件でも扱いに慣れているのです。瀬戸内の田舎に住みたかったそうで、気に入ってもらえ、本当に購入するはこびとなりました。  面白い人だなと思って、その後もLINEでやりとりしています。リノベーションが終わったら、見に来てと誘われているので、行くつもりです。人の縁って不思議なものだと思いましたね。 <取材・文/鈴木拓也> 【高殿円】 兵庫県生まれ。2000年『マグダミリア三つの星』で第4回角川学園小説大賞奨励賞を受賞しデビュー。13年に『カミングアウト』で第1回エキナカ書店大賞を受賞。主な著作に『トッカン』シリーズ、『上流階級 富久丸百貨店外商部』シリーズなど。漫画原作も多数手がけている。小説以外の最新の著作は『私の実家が売れません!』(エクスナレッジ)。また、自費出版として『98万円で温泉の出る築75年の家を買った』がある。 X:@takadonomadoka note:https://note.com/takadonomadoka
ライター、写真家、ボードゲームクリエイター。ちょっとユニークな職業人生を送る人々が目下の関心領域。そのほか、歴史、アート、健康、仕事術、トラベルなど興味の対象は幅広く、記事として書く分野は多岐にわたる。Instagram:@happysuzuki
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