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日本の“トイレ”で外国人観光客が感動。お土産に“便座”を爆買い「日本のトイレは、もはや文化だった」

“おもてなし”と“快適さ”の交差点——日本のトイレで感動したワケ

今回の旅を通じて、コニーさんは「便利だった」だけでなく日本のトイレに込められた“精神”に心を動かされたという。 ヨーロッパでは、環境保護の観点からペーパータオルが減らされ、代わりに布製タオルディスペンサーやハンドドライヤーが使われている。だがそれが必ずしも快適とは限らない。高齢者にはタオルを引き出すのが大変で、機械の故障や詰まりも多い。きれいなタオルが永遠に出てこない……そんなこともよくあるそうだ。 「EUは環境を優先しすぎて、利便性が置き去りにされている気がするわ」 そう語るコニーさんにとって、日本のトイレはまったく違う体験だった。 「日本のトイレは、もはや文化だったわ!」 清潔さ、利便性、快適性、そして美意識まで。そのすべてが、日常の中で当たり前に機能している。ときにパーキングエリアのトイレにすら生け花が飾られ、使う人の心を癒やす空間に仕立てられている。これこそが、日本のトイレが“衛生設備”を超えて、“文化”と呼ばれる理由だ。 実際、慣れない左側通行の長距離ドライブに少し疲れていた息子たちも、この生け花を見て「こんな所にも飾られているなんて……ホント、すごいね!」と驚いていたという。オーストリアでも花を美しく飾る文化はあるが、まさか高速道路のトイレにまでとは思わなかったようだ。ちょっとした花が、疲れた身心をふっと和ませてくれたようだ。

日本のトイレは世界の常識を変える

温水洗浄便座

コニーさんの家に無事に温水洗浄便座を設置した電気工のマルクスさん

「この便座を通じて、日本の素晴らしさを少しでも世界に伝えたいわ」 コニーさんが大事そうに抱えた白い箱は、単なる家電ではない。そこには、日本の“おもてなし”と“合理性”がたくさん詰まっていた。 日本のトイレは、世界の常識を変える。そんな未来は、もう静かに始まっているのかもしれない。 <取材・写真/パッハー眞理>
ウィーン生まれ、演奏家の両親のもと東京で育つ。慶應義塾大学文学部卒業。1859年設立されたコンコルディアプレスクラブウィーン会員。英国・オーストリア・インドに滞在し、欧州在住歴は40年以上。『地球の歩き方』ほか各メディアに寄稿。2018年、オーストリア政府より「功労黄金名誉勲章」受勲。著書に『アウガルテン宮殿への道』(ショパン、2002)など。世界100か国以上の現地日本人ライターの組織「海外書き人クラブ」会員。
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