脱法ドラッグ使用者が証言「吸って5分でおかしくなる」
脱法ドラッグに起因すると思しき、事件や事故が後を絶たない。事件にはならずとも、脱法ドラッグ吸引者が街中で奇声を上げて暴れるなどの“奇行”に走り、警察に保護されたり、救急搬送されるケースも多発している。 吸引することで人を狂わせ、果ては第三者に危害すら与える脱法ドラッグ。吸った人間は何を見て奇行に走るのか……。恐怖の実態を探った。
【リキッド系&パウダー系】
「野外ライブに行ったとき、リキッドを1、2滴ほど酒に混ぜて飲んだら、30分くらいで気分が高揚してきた。それで、気づいたら汚い簡易トイレに籠もり、1時間くらいオナニーをしていたんです。そのときは、『世界中の幸せはすべてオレのものだ!』っていう気分でした……」
そう話す平賀毅さん(仮名・42歳)は、約4年前からリキッドの脱法ドラッグを使い始めた。吸引者たちから「ダウナー系」と言われる脱法ハーブに対し、中枢神経興奮系の成分を含むリキッドやパウダーは、気分が高揚する「アッパー系」とされている。
「最近のは効き目も強くなってますね。ハーブはだるくなって動きたくなくなるけど、リキッドはテンションが上がりっぱなしになるんです、一回キメて効果が切れかかった頃にまた追加で使うことを『追う』って言うんですけど、2回目は違うリキッドを使ったほうが効く。ただ、前にそれをやったら、吐き気が止まらなくなって5時間便所に籠もったこともある」
◆ハエが頭上を飛び、ゆがんだ天井がみるみる迫りくる
また、「パウダーはリキッドよりも即効性がある」とは、中田誠二さん(仮名・27歳)。「パウダーは鼻から入れると、ものの5分でくる」と続ける。
「効き始めると、まず目つきが変わります。視界の正面だけが先まで見渡せる感じで、横は暗くなるから一点を凝視する。あと、クラブとかだと足が止まらなくなるんです。血走った目をして狂ったように踊るので、やっているヤツはひと目でわかりますよ。なぜか無性に叫びたくなって、ゲロを吐くような感じで『グェー、グェー』と奇声を発したこともありますね」
さらに、長時間連続して吸引し続けた際には、「寝ようと横になってもグニャグニャの天井が自分に迫ってくる」、「いるはずのないハエの群れが頭上をずっと飛び回る」といった幻覚にも襲われたという。
◆目の前でピンクや緑の蛍光色の火花がはじけた
パウダーによって、幻覚や幻聴に襲われたとの声は多く聞かれた。
「冷蔵庫のコンプレッサーの音を聞いてたら、なぜか冷蔵庫が角ばったロボットに見えたんです。で、一緒にヤッていた友達に『アイツ(冷蔵庫のこと)、発進するぞ』と言ったら、その友達も『うお、マジだ!』って」(29歳・男性)
「ハーブを吸った後にパウダーをやったら、目の前で緑の蛍光色の火花がバチッと弾けたように見えた。その後、すごい愉快な気分になって……。笑いが止まらなくなって自分を殴ってみたけど、痛くなかった」(33歳・男性)
ただ、吸引者が口を揃えるのは使用後の惨状だ。前出の中田さんは「気絶したこともある」と言う。
「パウダーを吸うとまったく眠くなくなるんですが、体は異常にだるいんです。3日間寝られない日もあって、そしたら外出先でぶっ倒れたらしく、目覚めたら病院で点滴を打っていました。体が限界だったんでしょう。あと、以前その状態で車を運転したら、視界はおかしいし、足が棒のようになってブレーキがうまく踏めなかった。気づいたら一般道で80km近く出てました。朝方だったから助かったけど、(脱法ドラッグを)やったヤツが事故るはずだなと……」
悲劇の元凶になるのは明らかだ。
イラスト/テラムラリョウ
― 脱法ドラッグ吸引者が見る「おぞましき幻覚」【3】 ―
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