「オーガニックだから健康に良い」は科学的な根拠ナシ
体にいいものを食べたいと、オーガニックな自然食材などを愛好する女性は少なくない。それはいいのだが、度を越した「信仰」で周囲を振り回す人もいる。なぜ世の多くの女性たちはオーガニックに熱狂するのだろうか。食品リスクの経済分析、オーガニック事情に詳しい近畿大学の有路昌彦氏はこう分析する。
◆漠然とした食への不安が根拠なき流行に拍車をかける
「まず『オーガニックだから健康に良い』ということに科学的な根拠は特にありません。生産コストもかかり、値段も野菜一つとっても一般的なものの数倍ということも少なくない。ただ、そこには『高額で普通と違うものを消費する私は特別』という一種のブランドが存在し、女性の心をくすぐるうまい図式が成立しています」
過去に国内外で起きた食に関する中毒や事故も、世のオーガニック信仰を助長する一つの要因になっているという。
「さまざまな偽装事件に異物混入など、原因は違えど工業的に生産される市販の商品に対して、消費者の中には『既製品は信用できない』という漠然とした不安や不信感が生まれているのかもしれません。だからこそ『自然のものは安全だ』という非科学的なロジックが浸透してしまっているのです」
◆先入観の押し付けをかわす対処法とは
オーガニックがもてはやされると同時に、話題になるのが化学調味料や添加物などの危険性。これも「誤ったイメージが先行している」と有路氏は語る。
「添加物や保存料など『ケミカルは悪』という認識が一部ではまかり通っていますが、きちんと審査をクリアした保存料は食中毒のリスクを下げるためにも必要不可欠。
また、有機質の肥料も環境にはポジティブでも、寄生虫のリスクもある。環境へはオーガニックの貢献がありますが、添加物を正しく使っているものを市場から排除するのはあまりにもリスキーです」
では根拠なき持論を押し付けられた場合、どう対処すべきなのか。
「『他者の否定は自己の肯定』であるように、持論をとにかく展開することで、一生懸命自分を肯定したいのが本質でしょう。でもこちらも同じ姿勢で挑んでしまってはかえって逆効果なので、『お互いの価値観は否定しない』というルールを作る。そういう人たちにとって事の真偽の追求は本来特に関係ない。だから正論を持ち出しても通用しない。否定せず『君は君、僕は僕、されど仲良く』という姿勢がベストかもしれません」
宣教師化した彼女たちは今後、一体どこへ向かうのだろうか……。
【有路昌彦氏】
近畿大学農学部准教授。専門は食料経済学、食品リスク経済分析など。著書に『無添加はかえって危ない』(日経BPコンサルティング)
取材・文・撮影/青山由佳 朝井麻由美 清談社 山崎由貴
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