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後を絶たない[震災義捐金・補助金]横領事件の背景

傍聴, 地震, 東日本大震災, 犯罪, 裁判

義捐金や補助金の横領事件は後を絶たない

 今年2月、被災地である岩手県山田町から「緊急雇用創出事業」を託されて、町内でさまざまな事業を行っていたNPO法人「大雪りばぁねっと。」(破産手続き中)の代表理事は8億円近く受け取った補助金を私的に流用し、業務上横領の疑いで逮捕された。今も約3億円が使途不明とされ、有罪となれば、最高で懲役10年の重罪となる。

 こうした義捐金や補助金などを、受け取るべき立場でない者が不正に受け取ったケースが、東日本大震災では横行した。この3年間、震災や原発事故などに付け込んださまざまな震災犯罪の実態を、全国の裁判所の法廷で取材し、この度「震災裁判傍聴記~3.11で罪を犯したバカヤローたち」を上梓したフリーランスライターの長嶺超輝氏はこう話す。

「アメリカからの義捐金が、被災地へ贈られる途中で約1000万円あまり横領される事件が大阪で起き、仙台では、幼稚園の天井が地震によって崩れたと装って、園長らが1000万円以上の補助金を不正受給する事件も起きました。いずれも、経営上の資金繰りに苦しんでいたのが犯行の動機だという話です。また、岐阜県内でも、地元の特養老人ホームが精一杯で支出した100万円あまりの義捐金を、私的に流用した役場の公務員が逮捕されています。

 裁判では『人として間違っているのはわかっていたが、目がくらんでしまった』と供述していました。それにしても、今回発覚した『りばぁねっと。』の件は、東日本大震災をめぐる横領としては、ケタ違いの金額でしょうね」

 こうした義捐金や補助金は、人の善意や国民の血税が賄われているのは言うまでもない。それらを不正に受給する行為は許し難いとともに、真に補助金が必要な人への受給を妨げることにもなる。

「ほかにも、東北の被災地では原発事故の影響で事業ができなくなったと、嘘の申請書を何枚も書き、複数の役場から繰り返し600万円以上の補償金を受け取った男が逮捕されました。石巻では、津波で被災した家屋を解体する工事の受注をめぐって、贈収賄事件が発生してしまいました」(長嶺氏)

 石巻の贈収賄事件に関しては、長嶺氏は裁判を傍聴し、著者『震災犯罪裁判記』の中で、そのときの弁護士と被告人の男(臨時職員)とのやり取りを描写している。

―――以下、『震災裁判傍聴記』より抜粋―――

(被告人質問にて)

――『小遣い、もらえんだっちゃね』と(解体業者の)社長に言ったことはありますか?

「……はい」

――『小遣い』とは、どういう意味ですか?

「……(回答なし)」

――仕事を紹介したお礼という意味ですか?

「……はい」

――あなたは、小遣い稼ぎのために、公務員の立場を利用したことになりますが。

「申し訳ありません……。申し訳ありません…………」

 男は涙声で謝罪の言葉を繰り返すばかりだった。

――――――――――

 こうした東日本大震災の状況は、決して東北の人々の倫理観が欠如しているわけではない。むしろ、震災に付け込む横領は「被災地になれば、多かれ少なかれどこでも起きうる出来事」だと、長嶺氏は話す。

「1995年の阪神淡路大震災や、1993年の北海道・奥尻島の津波被害の際も、義捐金の横領は発生しました。1923年の関東大震災では、東京で、救援物資の米40俵や、スペイン公使の自動車が横領されたり、行方不明者の相続人と偽って財産を横取りしようとする者や、貯金原簿が焼失したのに付け込んで大金を横領した郵便局員、被災者向けの減税措置を代理申請すると偽って手数料を巻き上げる者までいた……との記録が残っています。当時の復興局(今の復興庁に該当)では、復興事業の絡みで贈収賄事件が起きたとのことで……。そんな犯行に手を染めた彼らも、震災以前には前科がなく、もともと普通に暮らしていた人が多かったようです」(長嶺氏)

 大震災という特殊な状況が人間を犯罪に駆り立ててしまうのか。東日本大震災から3年が経った今、これらの事件の真相を知るうえでも、加害者が裁判で何を語り、どのような状況で罪を犯してしまったのか。そこから目を背けてはいけないのかもしれない。

<取材・文/日刊SPA!取材班 Photo by flicker Simon Cumming、写真加工/編集部>

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