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「キャンプ以上」高橋周平が思わずこぼす中日2軍の猛練習

午後7時の高橋周平

午後7時になっても高橋周平の一日は終わらない

 いまや球界では広島カープが四半世紀ぶりの「貯金10」(4/29終了時)で単独首位と話題をさらっているが、カープよりもはるかに熱い野球を戦っているのが、今年の中日ドラゴンズ2軍だ。  記者は先週14日(月)、週刊SPA!・谷繁兼任監督の連載取材のためナゴヤドームで小一時間ほど話を聞いたあと、15日(火)、16日(水)の両日、2軍の拠点であるナゴヤ球場での広島カープ(2軍)戦を取材した。  ゲーム前にまず驚いたのが、ファームのノック風景だった。落合監督時代の2004年に一塁手としてゴールデングラブ賞に輝いた渡邉博幸内野守備コーチがノックバットを片手に現れると、すわっ!これは学生野球か? と錯覚するような大声がグランドいっぱいに響き渡った。  記者はこれまで20年近くプロ野球に関わってきて、少なく見積もっても2軍の試合も数百試合は見てきたが、プロのユニフォームを身にまとった選手たちが高校球児のように「カモン!ノッカー!!」と競って声を張り上げる光景を初めて目にした。  驚きは続く。ドラゴンズの攻撃中、ある選手がファーストゴロを打った。難なくゴロを捌いたカープの一塁手がベースを踏んでアウトとなったが、ここでもバッターランナーは高校球児のように一塁ベースを全力で駆け抜けていた。  東海大甲府高校から2012年ドラフト1位で入団した3年目の高橋周平選手に至っては、連日12時30分からの試合に3番ショートでフル出場した後、16時15分からグランドで特守をこなし、17時30分から室内で打ち込み、夜の7時をすぎてようやくバットを置くほどの練習量。  打ち込みが終わった時、「まるでキャンプみたいな練習量ですね」と記者が声をかけると、高橋周平選手は一瞬、苦笑いを浮かべたあと「いや、キャンプ以上ですよ」とポツリと呟いた。足早に隣接する寮の食堂へ向かった高橋選手には、夕食後もバントやバスターの小技の練習が課せられているという。 ◆“鬼軍曹”佐伯二軍監督を直撃
佐伯2軍監督

熱心に打撃指導をする佐伯2軍監督(2月・読谷キャンプにて)

 今年からファームを指揮する佐伯貴弘2軍監督に取材を申し込むと、マネジャーから「取材は大歓迎ですが、全体練習と個別練習が終わる7時すぎからの取材になると思いますよ」と前日に連絡をいただいた。半分は社交辞令だろう、とタカをくくっていた記者の前にユニフォーム姿の佐伯二軍監督が現れたのは、本当に午後7時を回っていた。 「2軍にはいろんな立場の選手がいる。例えば今日みたいに(本来は一軍メンバーだが実戦感を養うため)スタメンで出場した森越みたいに上から降りてくる選手もいれば、球団が指定している強化選手もいるし、重たい3桁の背番号をつけた育成選手もいる。でも立場はどうあれ選手たちには一貫して『競争だ』と言っています。ファームの試合に出れない選手が、一軍の舞台に立つことなんて有り得ませんからね」  谷繁元信兼任監督と横浜・中日両球団で苦楽を共にした佐伯2軍監督は、2011年のドラゴンズでの現役生活を最後に、2012年は浪人生活、2013年は評論家としての活動を経たのち、2シーズンぶりにユニフォーム姿に返り咲いた苦労人だ。 「選手にはいつもこう言うんです。『お前らはアウトになれて羨ましいなぁ』って。現役を引退した人間は、アウトになることだって、打たれることだって叶わないですから。だからユニフォームを着ている時間は目いっぱい野球をやってほしい。そして彼らにたっぷりと野球を“やらせる”環境を作るのが、僕らの仕事です」  佐伯監督の“やらせる”という言葉からは、高圧的で一方的な“やらせる”とは違った愛情を感じた。  翌日12時30分からの試合で、高橋周平選手は4本のヒットを放った。練習は嘘をつかない。ドラゴンズの明るい未来を充分に予感させた。 <取材・文/小島克典(スポカルラボ http://www.sclabo.net/) 撮影/テポドン(本誌)>
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