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弁護士が読み解く「小保方氏サイドの抗議の意図」

不祥事を起こした際、重要なのはその後いかに事態を収束させるかだ。そんな「不祥事・危機対応」に関して、多くの企業などから相談を受ける長谷川裕雅弁護士が、世間を騒がすスキャンダルの数々を「危機対応力」という面から読み解く――。 【第四回 STAP論文問題】
理研

理化学研究所HPより

 自殺した笹井氏が小保方氏に宛てたとされる遺書の内容が報道機関にリークされたことについて、小保方氏の代理人が不快感を表明しています。発言内容の当不当はさておき、小保方氏や代理人の反論抗議は、スキャンダルの渦中にある人物として異例の多さとも言えるでしょう。  ときには刑事告訴や訴訟提起の可能性も示唆しながら「不正」の定義の明確化や、理研・懲戒委員会のメンバー構成の適正化までも求めていますが、査問を受ける立場の人間が注文を付ける姿には、違和感を覚える方も多かったようです。  小保方氏が意見表明をする度に世間の風当たりは強くなりました。正当な抗議ですら「立場を考えると言う資格はない」という声もあったほど。例えばNHK会長も「手法が不適切だった」と認めた取材による負傷では、「逃げ隠れをしたほうが悪い」と断ずる意見すらありました。  世間受けのことだけではなく、今までの経緯や今後のことを考えれば、「あえて何も言わないでおく」という方法もあります。ある一点でこちらに分があったとしても、それ以外で形勢不利であれば、黙っておくのも立ち振る舞いの一つなのです。  小保方氏の事例でいうと、研究能力に疑問符が付いたうえにトラブルメーカーのイメージまで定着すると、理研残留はおろか再就職にも悪影響が出かねません。  一方で、「計算づくであえてモンスターになる」という手もあります。  例えば、解雇の無効性を主張する労働事件などでは、裁判に勝って会社に残っても針のむしろ。辞めることが大前提で金銭補償が”本当の落としどころ”でも、従業員の地位を確認するポーズをとりながら会社と徹底的に争うこともあります。  面倒な人間であると思わせることができれば、簡単には片付けにくくなるでしょう。小保方氏に不利益な処分を下す人間は全員、及び腰になる。何かを諦めることができた人間は、強いのです。 「研究者の道は諦め、当面は給与をもらい続ける。懲戒解雇と博士論文のはく奪は絶対に避けたい」  小保方氏サイドにそんな真意があるのかはわかりません。しかし、「理研に残りたいにも拘らず、なぜ不利な発言を続けるのか」という疑問に対する、有力とまで言わないまでも、一つの「仮説」ではあります。 <文/長谷川裕雅 構成/日刊SPA!取材班> 長谷川裕雅■長谷川裕雅(はせがわ・ひろまさ)■ 東京弁護士法律事務所代表。朝日新聞記者を経て弁護士に転身。現在は政治家や芸能人のマスコミ対策を想定した不祥事・危機対応や、相続問題などにも取り組む。著書に『磯野家の相続』(すばる舎)、『なぜ酔った女性を口説くのは「非常に危険」なのか?』(プレジデント社)
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