アメリカのイラク空爆、中国のウイグル自治区弾圧、ウクライナの内乱、イスラエルのガザ地上侵攻など、戦争・紛争のニュースが絶えなかった昨今。一部は停戦も進んでいるが、現在も多くの民間人が戦闘に巻き込まれ、殺されていることに変わりはない。こうした争いは宗教や民族対立などが原因といわれているが、その陰には「カネと資源」の問題が潜んでいた!!
◆軍事費は国家予算の16%!爆撃を続ける“超軍事国家”【イスラエル】
イスラエル軍に砲撃され、炎上するガザ発電所。唯一の発電所が破壊され、ガザの人々は深刻な電力不足に悩まされるようになった(撮影/志葉玲)
7月8日に開始されたイスラエル軍のパレスチナ自治区ガザ地区への侵攻。8月26日に停戦が発効したが、F-16戦闘機やアパッチ攻撃ヘリなど、アメリカから兵器を導入し圧倒的な戦力を誇るイスラエルの攻撃は、ガザ側に2100人以上の民間人死者をもたらした。現地ガザで取材をしたジャーナリストの志葉玲氏はこう指摘する。
「イスラエルは『武器密輸やテロのためのトンネルを破壊している』と主張していましたが、実態は無差別で徹底的な破壊でした。ガザ東部のシュジャイヤ地区では、住民が退避しきれていないのに空爆や砲撃が繰り返され、何百軒もの家々が全壊。瓦礫の下に遺体が埋まるという状況に。最初から子供をターゲットにしたとしか思えない攻撃も繰り返されました。そもそも東京23区の半分ほどの面積のガザは人の出入りが厳しく規制され、難民キャンプも飽和状態。避難するにも避難する場所がないのです」
なぜイスラエルは世界の批判を浴びながら、これほどまでに残酷な攻撃を続けたのだろうか。
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負傷し治療を受けるガザの子供たち。今回の犠牲者の4分の1以上が未成年だ。停戦中に国連の避難所を空爆するなど、非人道的な攻撃が繰り返された(撮影/志葉玲)
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(撮影/志葉玲)
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(撮影/志葉玲)
「国家予算の16%を軍事費が占めるイスラエルは戦争によって成長し、安全を確保してきた国。戦争の敷居が低く、容易に戦争を始められる国になっています」と指摘するのは軍事ジャーナリストの神浦元彰氏。
「イスラエルは実戦ではしばしば非人道的兵器も使用します。’06年にレバノンを攻撃した際、イスラエル軍はクラスター爆弾を大量に使用しました。’08~’09年のガザ侵攻の際には白リン弾を使用しました。兵器の定期的な『在庫整理』が必要なのでしょう」(神浦氏)
◆ガザ侵攻はさながら武器見本市”!?
イスラエル軍に徹底的に破壊されたガザ市東部シュジャイヤ地区。ガザ全体では3000戸以上の建物が破壊され、人口の3割以上が避難を余儀なくされた(撮影/志葉玲)
イスラエルの強大な軍事力の背後にはアメリカが控えている。今回のガザ侵攻に際しても、世界中がイスラエルを非難する中、アメリカはイスラエル支持を表明。国連でも停戦勧告を採択させなかった。アメリカは’85年以降、毎年約3000億円をイスラエルに援助している。使い道のほとんどが軍事関係で、これはイスラエル軍事費の約20%に及ぶ。
「アメリカの政界ロビイストにはユダヤ人が多い。多くの大企業でもユダヤ人が強い発言力をもっています。アメリカ大統領としては珍しくイスラエルとの関係が薄いオバマ大統領ですが、それでもイスラエルの暴走を止められていません」(神浦氏)
そして、そのイスラエルの重要な産業となっているのが兵器製造業だ。
「イスラエルはミサイルのセンサーやロボット兵士のコンピュータ部品など精密機器部品に関して非常に優れた技術を持っています。そのほとんどはアメリカの軍事メーカーに卸され、アメリカ製兵器として販売されています。またイスラエルは中国とも取引をしていて、中国の空中空輸機にはイスラエルの技術が使われています」(同)
今回のガザ侵攻で、イスラエルは「アイアンドーム」と呼ばれる地対空ミサイル防衛システムを使用、ハマスのロケットを迎撃した。
イスラエル地元紙の報道によると、韓国政府が対北朝鮮用にアイアンドームの購入を検討しているという。製造元のイスラエル企業ラファエル・アドバンスト・ディフェンス・システムズは「最近、アイアンドームの性能を見てさまざまな国が購入に関心を寄せている」と話した。ガザ侵攻はさながら実戦を交えた武器見本市のようになっているのだ。
日本もまた無関係ではない。神浦氏はこう語る。
「三菱重工などが最新鋭戦闘機F-35に搭載するミサイルの共同開発に参加する予定です。イスラエルはこのF-35を導入予定で、近い将来、日本製部品を組み込んだミサイルがパレスチナを攻撃することになる。間接的とはいえ、世界的に批判を受けるイスラエルに兵器を売ることが、果たして日本の国益になるかは疑問です」
― [戦争とカネ]を読み解く世界地図【1】 ―