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「停戦合意」しても、ガザの人々の苦しみは終わらない

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イスラエル軍の攻撃によって負傷した民間人。長年続く封鎖によって医療物資や食料が不足している

「障害を持っていたムハンマド・リアド・シャダッラ君(4歳)が自宅の前で殺されました。彼の家にミサイルが撃ち込まれたのです。『武装勢力だけを狙っている』とイスラエル軍は言っていたのに……。たまたま近くにいた5人も死亡しました。何の罪もない民間人が、突然のミサイル攻撃で殺されたのです」

 パレスチナ自治区・ガザ市内の医療NGO「パレスチナ医療救援教会」(PMRS)で被害者の救援を続けるアイード・ヤギ医師は、イスラエル軍による8日間の熾烈な空爆の状況をこう語った。

「11月20日、ガザ北部にある『ヨルダンフィールド病院』がイスラエル軍に空爆されました。この病院では、前回の軍事侵攻で負傷した民間人がリハビリなどの治療を受けている。イスラエル軍はそのことを知っていたはず。このような場所を空爆することは、国際法上違法であり、人としても決して許されることではありません」(ヤギ医師)

 現地時間の21日21時、エジプトが仲介役となりイスラエルとパレスチナの「停戦合意」が成立したが、病院には今でも次々と負傷者が運ばれてくるという。今回の攻撃で、パレスチナ側では子供36人を含む民間人146人が死亡。イスラエル側でも兵士1人と民間人4人が死亡した。超人口密集地帯に爆弾が降り注ぎ、ガザ市内の混乱は今も続いている。

「合意」といっても、これまでもイスラエルは停戦中に侵攻を進め、領土拡大を行なってきたという経緯がある。またハマス(イスラム抵抗運動)からの攻撃も続いているため、予断を許す状況ではない。

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ガザ市内の「シファー病院」で治療を受ける住民。次々と負傷者が運び込まれている

「死者やけが人はまだまだ増え続けています。イスラエルの封鎖によって普段から疲弊しているガザの人々が、これからの生活を立て直すことは非常に厳しいと思います」(同)

 ガザ地区で活動する日本のNGO、日本国際ボランティアセンター(JVC)の現地担当・金子由佳さんがインタビューに応じてくれた。同団体はガザで子供の栄養失調予防活動を行っている。11月16日、活動に関わっているボランティア女性の息子がイスラエル軍の空爆で亡くなったという。

「その女性は非常にショックを受けていて、今は電話にも出られません。空爆が続いているために、食料を買いに行くなどの簡単な外出もできない状況でした。始終聞こえる空爆の音に怯え続け、子供たちはもちろん大人たちも大きなストレスを抱えています。私たちJVCが支援してきた地域では、子供たちの栄養状態が少しずつ改善されていました。でも、この空爆や混乱によってさらに健康を害してしまうことが懸念されます。

 パレスチナ自治区の“飛び地”であるガザは長年イスラエルに封鎖され、外部との接触が断たれてきましたが、2006年に反イスラエル勢力であるハマスがパレスチナの政治主導権を握ってからは、封鎖がより強化されました。それ以降、商業物資だけでなく最低限の生活に必要な物資の輸入すら制限されています。ガザからの輸出は限りなくゼロに近い状況で、外貨も稼げない。

 イスラエル軍の空爆は今回だけではなく、戦時でなくても日常的に戦闘機が爆弾を落としていきます。停戦合意で空爆が一旦停止したとしても、封鎖が本格的に解除されない限りは、ガザの危機が続くことに変わりはありません」(金子さん)

 今後もガザの住民が生命の危機にさらされ、非人道的な封鎖が続くことに変わりはない。「停戦合意」といっても、問題はまだ何も解決していないのだ。

※日本国際ボランティアセンター(JVC)では、今回のガザ攻撃に対して現地団体と協力して緊急医療活動を開始。寄付金を募集中。
http://www.ngo-jvc.net/jp/projects/advocacy-statement/2012/11/20121112-palestine.html

<取材・文/日刊SPA!取材班 写真/パレスチナ医療救援教会(PMRS)>




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