『戦争論』を“誤読”した一部の連中がネトウヨになった――小林よしのりインタビュー
小林よしのり氏が『週刊SPA!』で23年ぶりに『ゴーマニズム宣言』を復活連載することが、昨日発表された。小林氏と『週刊SPA!』には浅からぬ因縁があったはずだが、実は今をさかのぼること3年前。2015年6月9日号で、小林氏は16年ぶりに『週刊SPA!』に登場している。来週、4月3日に『ゴーマニズム宣言』が復活することを記念し、当時のインタビューを加筆修正し、前後編に分けてお届けする!
「さらばだ わしは『SPA!』を去る」――。
’95年、世界初の思想漫画『ゴーマニズム宣言』(以降、『ゴー宣』)を連載し、絶大な人気を博していた小林よしのり氏は、こう言い残してSPA!と決別した。
’89年に発生した坂本弁護士一家拉致事件に、後に地下鉄サリン事件を起こすオウム真理教が関与していたことを作品内で示唆。教団から命を狙われたが、SPA!は教団幹部のインタビューを掲載し、見解が乖離した結果だった。
その後、小林氏は『SAPIO』(小学館)に舞台を移し、連載を続行。’98年の描き下ろし『戦争論』では、大東亜戦争肯定論を展開し、世代を超えたベストセラーを記録。左翼リベラルによる“自虐史観”が支配的だった当時の空気を一変させた。同時に、自身のスタンスもSPA!時代の“サヨク”(注1)から保守へと大きく舵を切った。以降の小林氏は靖国問題や皇位継承問題など、さまざまなテーマに挑み、今に至る。
そんな小林氏が三下り半を叩きつけたSPA!に16年ぶり(2015年当時/注2)に登場してくれた。彼の怒りは鎮まったのか? そして、“古巣”で彼は自らの思想の“変遷”をどう解説してくれるのか?
「あのときの怒りは……まったく忘れましたよ。20年も前のことを延々と粘着してもしょうがない。当時は、血気盛んだったから斬りかかる勢いで論争を挑んだし、だからこそ、それを描いた漫画も面白かった。わしが穏やかだったら、面白くないでしょ(笑)。そんな昔のことよりも今、腹が立つことがほかにいくらでもあるしね」
小林氏が『ゴー宣』以前に手掛けた大ヒット作品『東大一直線』『おぼっちゃまくん』はいずれもギャグ漫画だが、実は前者の隠れたテーマは学歴社会、後者は拝金主義への批判だった。彼は常に世の中に怒っており、それが結実したのが『ゴー宣』と言っていい。
「腹が立つ……怒りがわしの創作意欲に火をつけるわけです。沖縄の米軍基地や安保法制の問題は、今、一番怒っていること。このままいけば、日本はアメリカの属国化への道をひた走ることになる。だから、イラク戦争以来、わしがずっとケンカしている親米保守が、もっとも腹が立つ存在なんです」
折しも(2015年)5月14日、安倍内閣は安全保障関連の11法案を閣議決定。“平和法案”と称するが、成立すれば集団的自衛権の名の下に自衛隊の海外での活動が可能になる。保守論客がこぞって賛意を表明するなか、意外かもしれないが、小林氏は明確に反対している。それはSPA!時代に自ら吐露した「戦後民主主義にどっぷりつかったサヨク」傾向の残滓にも、左翼への“転向”にすらも映るが……。
「小学生の頃から戦争は嫌い。わし、好戦的と思われているみたいだけど、侵略戦争は絶対にしてはいけないのが大原則。それをもしリベラル、左翼というなら、子供のときから、ずっとわしは左翼だよ(笑)。ただ、日本の過去の戦争をどう評価するかについて、かつてのわしは知らなかった。
それで史料を読み込み、勉強して、運命的としか言いようがない避け難い戦争だったという結論に辿り着いたのです。当時は、今からは考えられないほど日本の言論空間が左に偏っており、自虐史観がこの国を支配していた。そんななかで、戦地に赴いた我々の祖父たちを単なる人殺しのように罵る風潮は間違っていると思ったんです。わしが祖父たちを擁護する立場になると、右翼、タカ派と左翼から一斉に攻撃されるようになってしまった。当時は、過去の戦争にやむを得ないところがあった、いい面もあったと言っただけで大臣のクビが飛ぶ……異常な国だと思いましたよ。そこで、大東亜戦争肯定論を描こうと考えたんです」
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