コロナ疎開に対する地元民の本音、都内在住の娘に「帰ってくるな」
緊急事態宣言が全国に拡大され、オフィス街や繁華街では人の姿がまばらとなった。そんななか、「コロナ疎開」という言葉が注目されつつある。人混みを避け、都心から田舎や観光地に避難する人たちが後を絶たないのだという。
大自然に囲まれ夏は避暑地として人気のエリア。現在はシーズンではないにも関わらず、県外ナンバーの車が増え、コンビニやスーパーは明らかに地元ではない人たちで溢れかえる。
ここで30年以上に渡って宿泊業を営む片桐ひろしさん(仮名・60代)が悲痛な思いを吐露する。
「県外ナンバーの車を見ると、腹立たしいと思うのが正直な気持ちです。こっちはちゃんと国の宣言を守っているのに、守っていない人がいるからコロナが余計に怖く思えるんですよ」(片桐さん、以下同)
片桐さんは緊急事態宣言が全国に拡大されて以降、客を受け入れない決断をしたという。
「宿泊業をしてきて、宿泊を遠慮してもらったのは初めてです。私の地域は自然が豊かなので、安全だというイメージがあるのでしょう。だから行こうと思っていたというお客さんもいました。しかし世界の状況を考えて、私たちの収入が減少してでも自粛を受け入れることを決めました」
とはいえ、家の裏には別荘地があるという片桐さん。不安は募る一方のようだ。
「今まではほとんど留守だったのに、年配の方が中心に来ています。また、貸別荘を半年貸してほしいという問い合わせが観光協会にくるようですが、地域の長老が『コロナ疎開は止めてください』と言いました。私も近所の人たちも賛成です」
自分だけが良ければいいのではない、緊急事態宣言を1人ひとりが守らなければ意味がないと片桐さんはうったえた。
同地でペンションを経営する内田春菜さん(仮名・40代)も「毎日考えさせられる」と頭を抱える。内田さんのペンションは現在も営業を続けているそうだ。
「“自粛”の二文字をニュースで見るたびに『私たちを殺す気か』と思ってしまう反面、予約者の住所が東京などのコロナ感染者が増加傾向にある地域だと、『大丈夫なのかな』と不安になってしまいます。とはいえ、予約を断るようなことはしません。自分たちの生活がかかっていますから……」(内田さん、以下同)
内田さんは、コロナ疎開してくる人たちに対して、内心では偏見の目をもっていることに「自分自身が情けない」と話す。そんな葛藤がありつつも、今日も笑顔で業務をこなす。
「ウェルカムではないけれど、マスクやうがい、手洗い、消毒など、きちんとエチケットを守っていただけるのであれば、お客さんを迎えたいと思います」
現在はゴールデンウィークを目前に控えているが……。観光地に住む人々からは、困惑の声が次々と聞こえてくる。
県外ナンバーの車を見ると腹が立つ
宿泊者の予約は受け入れるが複雑な心境
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2016年よりライター活動を開始。出版社にて書籍コーディネーターなども経験。趣味は読書、ミュージカル、舞台鑑賞、スポーツ観戦、カフェ。
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