更新日:2021年03月22日 15:27
仕事

仕事や人生に行きづまったら。壁を壊す“たった一つの習慣”/出口治明

 この人ほど幸せなビジネスマン人生はないのではないか? ライフネット生命創業者の出口治明(でぐち・はるあき)氏のことである。
出口治明氏

出口治明氏

 日本生命を58歳で退社、ライフネット生命を創業して社長・会長を10年間務めた。そのかたわら、ビジネス書から『人類5000年史』のような教養本まで数十冊を書いてベストセラーを連発。70歳で立命館アジア太平洋大学(APU)学長となり、世界中から来た学生を育成している。  どうすれば、こんなに精力的に生きられるのか? 出口氏は著書『カベを壊す思考法』の中で、「とにかくインプットの絶対量を増やせ」と力説する(以下、文章は出口氏による)。

日本のビジネスパーソンは「インプットの量」が少なすぎる

「新しい企画を考えろ」といわれてもなかなか思いつかない、決断を迫られてもとっさに決められずつい先延ばしにしてしまう。論理的に考えたり話したりするのが苦手……。  こういう悩みを抱えているビジネスパーソンが多いので、発想法や決断力やロジカルシンキングをテーマにしたビジネス書が売れるのでしょう。その手の本はほとんどがコンサルタントやコーチングのプロといった人たちの手で書かれているので、きちんと読んで実行すれば、それなりに役には立つのだと思います。  けれども、解決策としてそういう本を読むのは有益なことでしょうが、僕はそれより先にやることがあると思います。それは「インプットの絶対量を増やす」ということです。 疲れたサラリーマン 僕が見るかぎり、日本のビジネスパーソンはインプットが質・量ともに少な過ぎます。何故かというと、長時間の労働プラス飲みニケーションで勉強する時間がとれないからです。仕事が思うようにいかないのはたいていの場合、インプット不足に原因があるといっていいと思います。つまり、技術やノウハウ以前の問題なのです。

思考のもとは、脳にストックされた材料だけ

 何かを思いついたり、判断したり、論理を構築したりする行為を思考といいます。そして、あらゆる思考が行われているのは頭蓋骨のなかに格納された脳のなかです。脳は外界と接することができないので、目や鼻や耳や口や手足などのほかの器官を通じて情報を運び込んでやらねばなりません。  僕たちはそうやってこの脳にストックしたさまざまな知識や情報を必要に応じて引き出したり組み合わせたりして、その結果を自分の意見や判断としてアウトプットしているのです。これは小学生でもアインシュタインでもまったく同じです。 たまに「アイディアが降りてきた」とか「天啓がひらめいた」などという人がいますが、これだって実際はもともと自分の脳に格納されていて意識していなかったものが、何かの拍子に顕在化したというだけのことでしょう。まかり間違っても宇宙や異次元からの発信を脳がキャッチしたのではないことは確かです。  要するに、思考の材料になるのは、どこかの器官を経由して、脳にインプットされている情報だけなのです。どんなに素晴らしい頭の使い方を学んでもインプットの絶対量が足りなければ判断の精度は高まらないし、発想の幅も広がらない。また、そういう人がいくら論理的に説明しようとしたところで説得力は高まらないのです。
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(でぐち・はるあき)1948年生まれ。京都大学法学部卒。1972年、日本生命に入社し、ロンドン現地法人社長などを経て2006年退社。同年、現・ライフネット生命を創業、社長・会長を務める。2018年より立命館アジア太平洋大学(APU)学長。著書に『全世界史』『人類5000年史』『還暦からの底力』『カベを壊す思考法』など多数。Twitter:@p_hal

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