更新日:2024年01月11日 16:54
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「トラウマで吐いたりするほど病んでいた」19歳で家出した少女が「風俗は福祉」と語るワケ

 ベストセラー『売春島』、話題の新刊『ルポ 新宿歌舞伎町 路上売春』など数々のノンフィクションを世にはなってきたルポライターの高木瑞穂氏@takagimizuho2)。彼が新たなテーマに選んだのは、これまでタブーとされてきた「風俗と発達障害」だ。
夜の大久保病院付近 立ちんぼ

※画像はイメージです

 前回の記事では、軽度知的障害とASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)の障害を持ち、デリヘル嬢の傍ら、売春でもカネを稼いで暮らしている紗希(仮名、23歳)のインタビューを紹介した。今回はインタビューの後編をお届けする(以下、高木氏寄稿)。

風俗で自活しようとした19歳

 大学生になっても自由はナシ。唯一の救いはスマホを持たせてくれたことだ。母からすれば管理の一環だったのかもしれないが、ネットの世界に紗希は光を見た。人間関係がうまくいかず大学でもハブられていた。居場所を求めて出会い系アプリに登録したり、出会いカフェの存在を知りそこに入り浸ったりしたのだ。そして売春をはじめることになり、出会いカフェの客に家までストーキングされるようになり――ついには母親に売春がバレた。 「お前は人間のクズに育った」と母親から罵られたとき、沙希は「このままでは一生自由になれない」との思いを強くしたという。 「だから私、19歳のときに風俗で自活しようと家出したんです。普通のアルバイトとか、住み込みで働くなども考えたんですけど、発達障害とか知的とかの関係で人間関係とかうまくいかないってことはわかってた。どんな環境でもイジメられ続けてきたんで、結局、そういうのナシに稼げる風俗や売春の方が手っ取り早いかな、と。それで、ようやくお医者さんにも見てもらえたんですよ」

体にマジックで「死ね」と書くほど病んでいた

紗希

取材に応じてくれた紗希さん

――自分から病院に行ったの? 「ううん、その発想すらなかったなか、売春で知り合って、私の境遇を聞いて親身になってくれた男の人から『申し訳ないけどかなりの確率でそういうの(障害)があると思うから』って言われて勧められたのがきっかけです」 ――勧められたのをきっかけに、なぜ実際にそれを行動に移したの? 「なんか障害手帳あると割引になるよとか教えてくれる人もいたんで。それでなんか私もいけるんじゃないないのかなって。今までの人生を振り返ると、やっぱり私は普通じゃないから何かしらあるんだろうなと思って。親からもひどいことされてして、でそのトラウマとかでその時眠れなかったりとか、家でもうゲロ吐いちゃったりとか、結構してたんで。まあ夜眠れなくて家中でなんか暴れて物を散らかしちゃったりとかしてたんで、20歳の時とか。なんか自分の体に落書きしたりとか、暴言吐きながら体にマジックで『バカ』とか『死ね』とか書くほど病んでたんで。それで手帳とかあれば生きやすくなるのかなって思って」
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障害を持っているけど手帳は恥ずかしい?
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月刊誌編集長、週刊誌記者などを経てフリーに。主に社会・風俗の犯罪事件を取材・執筆。著書に『売春島 「最後の桃源郷」渡鹿野島ルポ』、『黒い賠償 賠償総額9兆円の渦中で逮捕された男』(ともに彩図社)、『裏オプ JKビジネスを天国と呼ぶ“女子高生”12人の生告白』(大洋図書)など。X(旧ツイッター):@takagimizuho2

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