「ホストは規制すべき」だと主張
最後に、私が大久保公園で立ちんぼしている若い子の約9割がホスト、メンズコンカフェ、メンズ地下アイドルの推しに貢いでいたり、売掛を理由に売春をしていたことに触れる前に、沙希は「付け加えたいんですけど」と前置きして「
ホストは規制すべきだと思います。なんでかっていうと、やっぱりその子を風俗に落として、借金までさせるのってやり過ぎだと思うんです、さすがに」と続けた。
ホストは私のような子を狙っているとか、そういう話を買春客から聞いたことがあるそうで、気持ちはいっそう切実だとわかるほど口調は強い。
それは、ひとたびホストに触れたら必ず“沼に落ちる”未来が見えているからに違いない。「優しく親身になってくれるホストに売り掛けを強いられ借金漬けにされそうになっても、争う自信がない?」と聞くと、「はい、そうです」と即答した。仮に、私が悪いホストで「高額ボトルを卸してほしいとお願いしたら?」と続けたら、私と紗希の関係はSNSでの数回のやりとりと、こうして対面して2時間弱話しただけにもかかわらず、「
私を騙すなんて簡単です」と答えは同じだ。
「そう断言できるほど自信が持てないこと? それが障害者ってこと?」
「はい、そうです」
認知行動コンサルティングオフィスの岩野卓博士
紗希の人生は、いかに危うい基盤の上に乗っかっているのかがわかる。そして、表向きは見えない障害を持った人たちが、私たちの日常と決して変わらない日常にいることも。前回の記事でも話を聞いた
認知行動コンサルティングオフィス代表の岩野卓博士(臨床心理学)は言う。
「知的能力が低いなどの障害があると、一般の人が分かる契約関係からくるリスクの予測ができないので、『言われた通りにしてしまう』ことが往々にしてあります。それに乗じる悪い大人がいればつまり、搾取対象になりやすいのです」
まっすぐ私を見つめる紗希の目が、それを強く警告しているように思えた。紗希は二十歳になったのを期に住民票の閲覧制限をかけて親と絶縁し、いまに至る。その知恵や手続きを教えてくれたのもまた、売春で知り合った男だった。
<取材・文/高木瑞穂>
【岩野卓】
認知行動コンサルティングオフィス代表。博士(臨床心理学) 。公認心理師、臨床心理士、産業カウンセラー、認定行動療法士。大学の講師として7年心理学を教え、医療・教育機関で10年以上認知行動療法を使って悩みを抱えた方々を支援した経験がある。
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月刊誌編集長、週刊誌記者などを経てフリーに。主に社会・風俗の犯罪事件を取材・執筆。著書に『売春島 「最後の桃源郷」渡鹿野島ルポ』、『黒い賠償 賠償総額9兆円の渦中で逮捕された男』(ともに彩図社)、『裏オプ JKビジネスを天国と呼ぶ“女子高生”12人の生告白』(大洋図書)など。X(旧ツイッター):
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