“外見に自信がなかった”女性が、身体改造にハマった理由「人間として見られたくない」
モデルや歌手、ダンサーとしてきらびやかなステージに立つMari氏には、昼の顔がある。
「日ごろは会社勤めをしているので、人目につくような場所には刺青を入れていないんです」
ステージ用のメイクや衣装に身を包んでいなければ、確かに白昼すれ違うには何の違和感も持たれないであろう「普通」の女性だ。だがよく見れば、身体改造の痕跡を見つけることができる。
両耳にぶら下がるおよそ50個のピアス、舌の中心から切れ込みが入るスプリットタン、腕の皮下に埋め込まれたシリコンチューブ――乳首や性器にもピアスをしているのだという。刺青のほか、これらの身体改造に辿り着いたMari氏の“自己表現”の根源に迫る。
現在40代になるMari氏は埼玉県に生まれた。母方の祖父母の実家が近く、幼少期はほぼ祖父母宅で過ごしていたという。
「祖父母は自営業をやっていました。現在まで業態を変えていろいろと事業を営んでいます。当時、生活に不自由した記憶はないので、それなりに裕福だったのかもしれません。ただ、生きづらさはありました。高校生くらいまでの私は、結構太っていたんです。しかも運動音痴で勉強もできない。『デブでメガネで取り柄がない』という、当時の子どもたちのイジメの標的になる要素を兼ね備えていました」
Mari氏は当時の辛さを担任教師に相談したが、一蹴された。
「教師は『他にも原因があるだろう?』と言いました。確かに私は読書が好きで、クラスメイトに遊びに誘われても『本読みたいから』と断ることがありました。今思うとそういう部分なのかなとは思いますが、当時は大人にも見捨てられたとショックを受けましたね」
大人への不信感は教師に対するものだけに留まらない。
「父ともソリが合いませんでしたね。何を言っても『お前にそんなことできるわけがない』と否定から入る人で。私が好きな書籍や楽曲の話をしても、父は必ず『何が面白いんだそんなもの』と切り捨てました。終始そんな調子なので、やがて話題に出すことさえしなくなりました。
私が高校に進学するときも『進学だって金がかかるし、どうせ高校に行っても無駄だから働け』とか言われて。結局、お金のかからない公立高校に進学しました。現在でも、他の家族との関係は良好なのに、父とは交流がありません」
生きづらさを感じていた学生時代
父から「高校に行っても無駄」と言われ…
ライター、エッセイスト。可視化されにくいマイノリティに寄り添い、活字化することをライフワークとする。『潮』『サンデー毎日』『週刊金曜日』などでも執筆中。Twitter:@kuroshimaaki
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