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心が病みやすいアラフォーの特徴――「強迫性タイプ、自己愛性タイプ、回避性タイプ」とは?

 厚生労働省の『平成24年労働者健康状況』によると、約6割が仕事に強い不安やストレスを抱えているという。今月から従業員数50人以上の会社に対してストレスチェックが義務付けられたことからもその深刻さが窺えるが、なぜ中年は病んでしまうのだろうか? ここではいくつか事例を紹介しよう。 アラフォーが抱える心のリスク 設計事務所で働いていた笹野剛さん(仮名・42歳)が心を病んだのは、第一線でバリバリ仕事を回していた30代後半のこと。 「やりがいがあって、徹夜仕事も日常茶飯事。毎月の残業時間が100時間に達しても、『俺はすごい!』とハイテンションでした。でも一方で、『仕事=自分の存在意義』になることで、テンションの落とし方がわからなくなってしまった。休日出勤を繰り返すうちに、今度は体が言うことを聞かなくなりました」  午前中に起きられなくなり、心療内科へ。それでも医師に「仕事をさせてくれ!」と食い下がった。 「あのとき、しっかり休んでおくべきでした。激しい偏頭痛や吐き気で日常生活すら送れなくなり、結局退職。今は職探しよりも日々を生き抜くことに必死です」  一方、ウェブデザイナーの勝村正志さん(仮名・40歳)は転職がきっかけでうつ病を発症した。 「制作畑でやってきたのに、下請けをまとめる中間管理職になったことが絶望的に合いませんでした。上司には『丸投げしろ!』と言われ、丸投げしたら下から突き上げられる。ストレスを抱えながらも悪戦苦闘するなか、その上司に『お前はもう40歳で伸び代がない』と言われたのがトドメの一撃でした」  会社でパソコンを開くと強烈な眠気に襲われるようになり、休職から半年後に解雇を言い渡された。

職場と家庭で孤立していくアラフォー

 中年が心を病む原因のほとんどは職場にある。だが、そこに家庭のトラブルが加わるとより悲惨だ。教育関係で働く山村孝之さん(仮名・44歳)は、介護と家庭不和によって精神を蝕まれた。 「母親の介護で実家を離れられず、都内の会社から転職したことで年収は600万円から300万円に半減。新しい職場では名ばかり管理職としてこき使われ、妻からも白い目で見られています。死んだほうがラクなのかなって思います」  こうした現在アラフォーの世代が抱える心のリスクを、精神科医の岡田尊司氏はこう分析する。 「上司と部下の狭間で肉体的・心理的負担が強いにもかかわらず、就職氷河期の採用抑制の影響で同期が少なく、愚痴を言い合えるはずの横の繋がりも希薄。家庭のサポートを期待しようにも、妻の更年期や子供の進学など問題は山積。つまり職場でも家庭でも孤立し、疲弊していく危険性が高い。特に技術系の人間が管理職に回されるなど適性に合わない業務を任されて行き詰るケースは多いです」  そして、心を病みやすいタイプには3つあると岡田氏。 「責任感が強く、仕事人間の強迫性タイプは、過労によって心身症になりやすい。自分に自信がある自己愛性タイプは、出世街道からの脱落などで急激に無気力感に襲われる。責任やプレッシャーを厭う回避性タイプは、昇進による負担増加で適応障害や新型うつになる可能性がある。いずれにせよ、予防と早期発見が治療の基本です」  はたしてあなたの心は本当に大丈夫か? 12/8発売の週刊SPA!に掲載されている大特集『診断テストでわかる[心を病む中年]の正体』では有識者監修のもと作成した診断テストを掲載。ぜひ、あなたの病んでる度を確かめてみてほしい。また、「かつて病んだ人々による“心を軽くする技術”」も掲載。「自分は大丈夫!」と思っている人ほど、心は悲鳴を上げているかもしれない。 【精神科医・岡田尊司氏】 岡田クリニック院長。パーソナリティ障害や発達障害治療の最前線で活躍。著書に『働く人の精神医学』(PHP研究所)など <取材・文・撮影/週刊SPA!編集部>
週刊SPA!12/15号(12/8発売)

表紙の人/ 広末涼子

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