バックランドとグラハムがついに接触――フミ斎藤のプロレス講座別冊 WWEヒストリー第24回

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 それはまさに“大作”の予告編だった。ボブ・バックランドと“スーパースター”ビリー・グラハムがニューヨークのリングでようやく接触したのは、1978年1月23日のマディソン・スクウェア・ガーデン定期戦だった。

バックランドとグラハムがついに接触

バックランドとグラハムが初めて接触したのは、グラハム対ミル・マスカラスのWWEタイトルマッチがおこなわれたガーデン定期戦だった(1978年1月23日)。マスカラスのセコンドについたバックランドは、グラハムと番外戦の乱闘を展開。(写真は米専門誌「レスリング・ワールド」1978年8月号表紙)

 この日のメインイベントは、グラハム対ミル・マスカラスのヘビー級タイトルマッチ。前年12月のガーデン定期戦の同一カードではグラハムの出血多量でマスカラスがレフェリーストップ勝ちを収め(タイトルマッチ・ルールで王座移動なし)、この試合は因縁ドラマの第2幕になっていた。

 ニューヨークのプロレスファンにとってマスカラスは特別な存在といっていい。いまになってみれば信じられないようなエピソードだが、ニューヨーク州体育協会は70年代前半までニューヨーク州内での“正体不明”のマスクマンの試合出場を禁止していた。このいささか現実ばなれした州条例のカベを壊し、マスクマンとして初めてガーデンのリングに立ったのがこのマスカラスだった(1972年12月18日)。

 長く西海岸エリアをホームリングにしていたマスカラスは、ニューヨーク・ニューヨークでは“スペイン語チャンネルのスター”でもあった。電波の弱いUHF局が平日の深夜にオンエアしていたロサンゼルスのオリンピック・オーデトリアムからのプロレス中継番組は、ニューヨーカーにとっては遠い土地の遠いプロレスだった。

 WWEの対抗勢力として1975年春にニューヨークで発足し、わずか半年で活動休止=消滅した新興団体IWA(インターナショナル・レスリング・ソシエーション=エディ・アイホーン派)の世界チャンピオンがこのマスカラスだったこともニューヨーカーのイマジネーションをくすぐった。

 グラハム対マスカラスのタイトルマッチの2試合まえの第7試合には、バックランド&ピーター・メイビア&トニー・ガレア&ラリー・ズビスコ対“プロフェッサー”トール・タナカ&ミスター・フジ&スタン・スタージャック&バロン・マイケル・シクルナの8人イリミネーション・タッグマッチがラインナップされていた。

 “予告編”はここからはじまった。バックランドがいちども試合に参加するまえに、ベビーフェース・サイドの3選手が敗退(退場)した。バックランド対ヒール・サイドの1対4のシチュエーションになった。元気いっぱいでリングインしたバックランドは、まるでワンマンショーのように得意技のアトミックドロップの連発であっというまにベテラン・ヒール4人からたてつづけにフォール勝ちを奪った。新しいスーパースターの出現を予感させる象徴的なシーンだった。

 セミファイナルでは、藤波辰爾(当時・辰巳)がカルロス・ホセ・エストラーダをドラゴン・スープレックス・ホールドで下しWWEジュニアヘビー級王座を獲得した。この試合もまた世代交代のうねりのなかのひとつの“伏線”だったといっていいかもしれない。

 メインのグラハム対マスカラスのタイトルマッチは、予想どおりの大乱戦モードになった。グラハムが両足をロープにかけてのお得意の“反則エビ固め”で再三、フォールを狙った。試合開始から10分経過の時点で、バックランドがマスカラスのセコンドとしてリングサイドにやって来た。

 バックランドはグラハムの足をセカンドロープから払いのけ、反則フォールを“未遂”に防いだ。グラハムとバックランドの乱闘がはじまった。レフェリーは、バックランドの乱入を理由にマスカラスの反則負けをコールした。グラハムはベルトをつかみ、さっさとドレッシングルームに逃げ帰った。

 試合終了後、リング・アナウンサーのハワード・フィンケルが次回ガーデン定期戦(1978年2月20日)のメインイベトとしてアナウンスした試合は、グラハム対マスカラスの因縁マッチ第3ラウンド=完全決着戦ではなくて、グラハム対バックランドのタイトルマッチだった。

 ガーデンを埋め尽くした2万人の大観衆はこの瞬間、“スター誕生”を確信した――。(つづく)

斎藤文彦

斎藤文彦

※この連載は月~金で毎日更新されます

文/斎藤文彦 イラスト/おはつ

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