「三丁目の夕日症候群」が日本経済をダメにする

◆“経済が伸びてた頃はよかった”じゃなく、これから伸びなきゃいけないんです!

飯田泰之氏

飯田泰之氏

「昨今の『三丁目の夕日』ブームというのは、それを持ち上げてるメディア側が年を取った証拠。今、メディアで発言する側にいる人って、当時、生活水準が真ん中より上だった人たちですよ。そりゃ、あの時代に大学に行けた人たちにとっては、良い時代ですよ。貧乏人は人間扱いされない時代ですしね」

そう語るのは、昭和を懐かしむ風潮を「三丁目の夕日症候群」と名付けたエコノミスト、飯田泰之氏。ただし、『三丁目~』の時代は高度成長期だけに、貧富の度合いを差し引いても、主観的に幸せだった人は多かったはずだという。

「貧しいけど心が豊かだったワケじゃなくて、貧しくても経済が伸びているから、幸福度は高かった。あと彼らは、この時代若かったから幸福だった。僕も若い頃は笑えるくらいカネがなかったけど、やっぱり楽しかった」

しかし、『三丁目~』の時代の貧しさと、現在の不況では意味合いが全然違う。それを現在の経済不況に重ねて無理やり昭和を美化するような風潮はどうなのか?

「世の中の高齢化に伴って、テレビや雑誌などの旧来のメディアは高齢化シフトにせざるを得ないんです。さらに今、購買力を持っていて、旧来のメディアに割と従属している年齢層は団塊より上だから、団塊に支持されるソフトじゃないと売り上げが見込めない。その結果、『三丁目~』的な作品を仕掛けざるを得ないワケです」

こうした傾向は、経済的にはよい流れではないという。

「結局、あの映画の支持層は主に団塊の世代で、若い人はあまり見てない。確かに今後10年間のマーケットを考えたら、売り上げ的にはそれでいいかもしれないけど、この層は10年後には、ほぼマーケットから消えます。いつまでも、皆で消えるマーケットを相手にしてて大丈夫なんですか? と。先は、じり貧ですよ」

何か打開策はないのだろうか。

「やっぱり経済が成長しないと厳しい。成長とはGDPの総額とかじゃなく、一人当たりの平均所得が上がること。そうすれば幸福度は上がる。昔は伸びてたからよかったね、じゃなく、これからも伸びなきゃいけないんですよ!」

このまま、浅薄な“幻想としての昭和”に逃げ込む連中の仕掛けが社会に蔓延する限り、我々が今生きている時代はどんどん滅びの道を進んでいくだけなのだ。

【飯田泰之氏】
エコノミスト。駒澤大学経済学部准教授、財務省財務総合政策研究所客員研究員。専門は経済政策、マクロ経済学。共著に『日本経済復活 一番かんたんな方法』など

取材・文/古場俊明 杉山大樹 青柳直弥(清談社) 八木康晴(本誌) 撮影/水野嘉之
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