不屈の弁護士にして都知事選候補者・宇都宮健児氏が語る「コワい人との交渉術」

宇都宮健児 12月16日、衆院選と同日に行われる東京都知事選。「石原都政を引き継ぐ」という猪瀬直樹副知事とは全く対極に、「脱原発」「反貧困」を掲げて出馬している候補が宇都宮健児弁護士。一般には知名度がそこまでないが、都知事選で猪瀬氏の最大の対抗馬と目されている。

 貧しい幼少時代から勉学に打ち込み東大合格。在学中に、体重が8kg減るほどの猛勉強の末、司法試験に一発合格して弁護士になった。

 現在は、多重債務問題などの最前線で活躍する宇都宮弁護士。

 当然のことながら、ヤクザやヤミ金からの脅迫も少なくないのだが、彼はどんな脅迫だろうが動じない。その現場に居合わせた本誌記者Mはこう語る。

「宇都宮弁護士に取材中、脅迫のような、ただ事ではない電話がかかってきました。それがちょうど、僕が先日拉致られたヤミ金の大親玉からの電話だったのです。『大丈夫なんですか』と聞くと、『ヤミ金やヤクザでも、上層部の人間はわりと話が通じますよ。あちらにもそれなりの理はありますから、要は法律を盾にじっくり話をすることです。でも、若いヤツや下っ端のチンピラのほうは要注意。後先考えずに行動に出ますから。あと怖いのは、新興宗教やカルト教団です』とさらっと答えました」

 本誌記者Mは、宇都宮氏からヤクザ、ヤミ金への対処の仕方を教わった。その基本は「相手の立場を尊重すること。決して下には見ないこと」だった。

 宇都宮氏はこう言う。

「ヤクザは組織内でのメンツが非常に大事。こちらが見下せば、まとまる話も絶対にまとまりません。まず相手のメンツを立ててやること。そして、その中で交渉できる範囲を探していきます。また、ヤクザの脅しは、たいてい口だけ。彼らは経済原理で動いていますから、実は一般人相手よりも安全なんです。5万や10万といったヤミ金が原因で人を殺すなんてありえない。それで懲役15年もくらうなんて割に合いませんから。それから、ヤクザもヤミ金もみな同じ人間で、どこかで人間らしい優しい感情、話し合える部分を持っている。私はそこに希望を持っているんです。交渉はそりゃあ怖いですよ。でも、僕を頼って来てくれている人たちを助けたいという思いがいちばん強い。事務所には借金苦で家庭崩壊、夜逃げをしたり野宿生活に入ったり、手首を切ったり、自殺を図ったりするような人たちがたくさん来ているわけです。僕がここで『怖い』って引っ込んだら、そういう人たちを助ける人がいなくなるしね」

 宇都宮氏の「他者のプライドを尊重する」という姿勢は、ホームレス対策にも通じる。ホームレス総合相談ネットワーク事務局の大河内知彦さんはこう語る。

「’08年末からの派遣村で新人相談員だったぼくは、明らかにウソとわかることばかり言う相談者への対応に悩んでいました。『相談活動って一体何なのだろう?』と思い詰めて宇都宮先生に相談したら、『派遣村に来られる方は、生活に困ってウソをつかなければならないほどに追い詰められているんだ。みんなそれぞれの事情もあるし自己のプライドもある。要は根気よく話を聞くことだ』とおっしゃったんです。根気よく話を聞いていれば、次第に心を開いてくれ、スムーズに話ができるようになるということがわかりました」

 週刊SPA!12月4日発売号「不屈の弁護士[宇都宮健児]奇伝」では、どてらい男、宇都宮健児弁護士の武勇伝を紹介している。 <取材・文/横田一 清水直子 写真/森住卓>

週刊SPA!12/11号(12/4発売)

表紙の人/南明奈

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