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給食に使われた福島県産牛肉「詳細記載なし」の謎

トレーサビリティ報告書

井上さくら議員が調査した、横浜市の学校給食に使われた牛肉のトレーサビリティ報告書。

原発事故後、スーパーなどの店頭から福島県産牛肉が消えました。その一方で、学校給食ではあいかわらず福島県産牛肉が頻繁に使われていたのです」 こう証言するのは、横浜市議会の井上さくら議員。井上議員は、横浜市の学校給食で使われた牛肉の産地について調査を行った。 「給食の材料は前もっていくらと決められているので、安いものを使えば使うほど業者は儲かるというわけです。そのため、市場で売れずに値崩れした肉が給食に回ってくる。放射線の影響を受けやすく、本来なら大人よりも安全な食べ物を食べるべき子供たちの給食に、福島県産牛肉が集中していた疑いがあります」(井上議員) 南相馬市の農家が出荷した牛から国の暫定基準値を超えるセシウムが検出されたことを受けて、横浜市は7月12日、福島県を含む7県で生産された牛肉について、全市立小学校と全保育園での使用をとりやめると発表。そして7月19日には、政府が全ての福島産牛肉の出荷停止を指示した。 「対応が遅すぎます。それまで『市場に流通しているものは国の暫定基準値以下』と言われ、検査体制も不十分なまま野放しにされてきました。そもそも、大人と同じ高い暫定基準値を子供たちに適用するべきではないと思います」(同) 横浜市の給食に使われた牛の個体識別番号をもとに、家畜改良センターのサイトで履歴を調べてみた。例えば、平成20年12月12日に北海道で出生したある雌牛は、平成21年8月27日に福島県内の牧場に転入後そこで育てられ、原発事故後の平成23年4月20日に横浜市鶴見の食肉市場に搬入された。 ところが、福島県内に転入する前と食肉市場に搬入された後は所在地や飼養施設の名称(または飼養者の氏名)が明記されているのに、福島県内の部分は「飼養県」の欄に「福島県」と書いてあるだけで、詳しい情報が載っていない。 ほかの福島県産牛についても調べてみたが、そのうちのほとんどが原発事故後を過ごした福島県内での詳細について書かれていない。これは一体どういうことなのだろうか? (独)家畜改良センターに聞いてみると、「こちらに届け出られた情報はそれがすべてです。牛肉トレーサビリティ法によると、どこで誰が育てたのかといった情報は個人情報にあたり、公開の義務はなくて任意。福島県産に限らず、他県産でも詳しい情報を公開していない場合もあります。つまり、現在の法律では飼養者がOKしなければ公開できないのです。消費者側が自分で調べる方法はありません」とのこと。 さらに、個体識別番号で管理されているのは「枝肉」だけで、タンやハツ、レバーなどの「畜産副生物」については「○○県産」ということすら調べられない。「追跡調査はほぼ不可能」(同センター)だという。 これでは消費者の不安は拭えそうにない。食品の放射能汚染に対して不安が高まっている現在、より徹底した検査と管理体制が求められている。 取材・文/北村尚紀
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