「北方領土の日」CM 予想以上にブーイングが多かった理由

予想以上にブーイング多かった? 「北方領土の日CM」

日本政府インターネットテレビ「北方領土問題『北方領土を描く』編」より

「そこは日本なのに。今、日本人が住むことができない場所。ほら、こんなに近いのに……。北方領土は日本固有の領土です」

そんなナレーションとともに、真っ白いキャンバスに見立てた画面には、北海道本島から見てわずか16km程度しか離れていない国後島の稜線と、それを眺める少女がパステル鉛筆でササッと描かれる――。

今年は例年にも増して、2月7日の「北方領土の日」を知らせる政府広報を多く目にしたのではないだろうか。2009年の鳩山政権時におこなった「事業仕分け(行政刷新会議)」により、大幅な予算カットを余儀なくされた政府広報番組が軒並み姿を消したため、このように同種の政府広報が繰り返しテレビで流されるというのは久々のような気もする。

 今年が戦後70年の節目に当たるだけでなく、現在、安倍政権が推し進めている対ロシア外交の先を見据えて、このタイミングで北方領土問題を広く国民の間に啓発することが目的であることは容易に想像できるのだが……。残念ながら、このCMに対する評判がすこぶる悪いのだ。

「国民の愛国心煽る目的しか考えられない。キナ臭くなってきたよ…」

「北方領土は日本の領土です! とかいうCM怖いよ」

「北方領土は日本のものです。ってCM初めてみた。少しぞっとした。静かに何かが始まってる感じ」

「最近『日本の領土なのに日本人が住めない土地があります』ってCMが流れてる。一瞬『福島?』って思ったのは我が家だけではあるまい。北方領土についての政府公報と分かってげんなり。北方領土に『住みたい』人がどんだけいるんだよ。まず生きてる国民が住みたい場所に住めるようにしてから言え」


ツイッター上には、安倍政権に向けてのものだろう。こんなにべもない批判的なつぶやきが溢れており、なかには、北方領土の問題そのものを知らないとおぼしき層の“批判ツイート”もちらほら散見された。現在、四十路を越えたオジサン世代からすると、昭和50年代にテレビのブラウン管を通して流れていた、あの昭和チックな“イガグリ坊主”の少年が出てくる色褪せたCMを思い出した程度だが、今を生きるネット世代の反応を見ていると、改めて、北方領土問題の“風化”が年を重ねるほどに加速しているのを見せつけられた思いだ。

そもそも北方領土とは、北海道の根室半島沖に連なる歯舞群島、色丹島、国後島、および択捉島を指し、現在もロシアに不法占領され続けている島々のこと。第2次世界大戦末期、日本がポツダム宣言を受託し連合国に「無条件降伏」することが決まった1945年8月15日のわずか3日後、それまで外国の施政下にあった歴史はなく、日本人によって開拓され、日本人が住みつづけたこれらの島々は、ソ連軍の不法な侵略に屈することになる。8月18日、千島列島最北端の占守島にソ連軍が上陸したのを皮切りに、8月31日にかけて島づたいに南下し、最終的に千島列島の南端であるウルップ島までを不法占拠。加えてソ連軍は別働部隊も駆使して、8月28日に択捉島を、9月1~5日には国後島と色丹島、さらには歯舞群島のすべてを占領し、これ以降、四島は今もロシアの実効支配下にあるのだ。

ツイートのなかには、上に挙げたように「北方領土に『住みたい』人がどんだけいるんだよ」といった少々乱暴な物言いもあったが、当時、択捉島以南の4島で暮らしていた人たちは実に1万7290人にものぼる。島民の半数はソ連軍の侵攻によりサハリンでの抑留生活を余儀なくされるなど多くの人が亡くなったが、故郷に帰ることを夢見る島民は今なお6596人(2013年末時点)もいるのだ。

毎年2月1日~28日は「北方領土返還運動全国強調月間」に指定されており、2月7日には全国各地で多くのイベントが催された。内閣府のホームページにも「北方四島の1日も早い返還実現のためには、国民の皆さん一人ひとりがこの問題への理解と関心を深めることが重要です。2月は北方領土返還運動全国強調月間として、全国各地で講演会やパネル展、キャラバン、署名活動など様々な広報・啓発活動が展開されます。皆さんもこの機会に、北方領土問題について考えてみてください」と書かれている。

ただ、近年「領土教育」の拡充もはかられているものの、現実の世界に目を向けると、まだまだロシアとの返還交渉を支えるだけの国民全体の「総意」となっているとは言いがたい状況なのだ。

2月12日には、モスクワで日ロ外務次官級協議が開かれる予定だ。ウクライナ情勢を受け孤立化を深めるプーチン大統領との首脳会談を逸早く開催し、北方領土問題の解決に向け、政府には全力で取り組んでもらいたいものだ。 <取材・文/日刊SPA!取材班>

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