「国民の所得は増えていない」のウソ――“反アベノミクス”に反論

連載02【不安の正体――アベノミクスの是非を問う】

ベアの効果はなかった?

“反アベノミクス”に反論。「国民の所得は増えていない」のウソ 昨年2014年度はトヨタを始めとした大企業で6年ぶりのベアが実施されました。したがって、我々日本国民の賃金はさぞかし上昇したのだろうと思いきや、厚生労働省が公表した「毎月勤労統計調査」の結果によると、2014年度の名目賃金は前年度割れであることがわかりました。

 この結果を受けて、「賃金増加が見られない!」とアベノミクスを批判する記事が散見されます。例えば次の東洋経済オンラインの記事です。

※2014年度の賃金は前年割れだった!(http://toyokeizai.net/articles/-/67144)

 しかし、これは統計の見方が間違っているだけであり、アベノミクスによって国民の所得は確実に増えているのが実情です。ベアの効果は確実に出ています。この件について順を追って説明したいと思いますが、まずは実際に厚生労働省が公表している「所定内給与」の前年同月比の推移(図1)を見てみましょう。

⇒【グラフ】はコチラ http://nikkan-spa.jp/?attachment_id=857393

“反アベノミクス”に反論。「国民の所得は増えていない」のウソ なるほど、確かに2014年度は前年度に比べるとゼロより下、マイナスで推移している月が多く、2014年度トータルでは賃金が-0.4%の下落となっています。これだけを見ると、国民の所得は増えていないような印象を受けます。しかし、この賃金指数とは、就労者の平均所得を指数化したものであり、国民全員が受け取っている所得の総額を表したものではありません。

 何が言いたいのかというと、皆さんは「平均化の罠」という言葉を聞いたことはないでしょうか? 例えば、5月19日に総務省が発表した2014年の1世帯が持つ金融資産額の平均値は1798万円だったそうですが、この数字をあなたは信じることができるでしょうか? まず無理だと思います。とてもすべての世帯が約1798万円もの金融資産を保有しているとは思えません。この原因、鋭い方は気付いていると思いますが、一部の富裕層が平均値を引き上げてしまったため、「平均値」が現実離れした値になっているのです。

 このようにただ単に「平均値」を見るだけでは正しい実態をつかむことはできません。各世帯の保有資産額の分布がどのようになっているのかを把握しなければダメなのです。これがいわゆる「平均化の罠」と呼ばれるもので、冒頭で紹介した記事もこの罠に陥っている疑いがあります。

新規雇用者の所得が賃金上昇分を相殺

 安倍首相は「アベノミクスの推進により新たに100万人の雇用が増えました」と、国会などで発言しています。しかし、この新規に増えた雇用100万人は女性と高齢者の非正規雇用が中心であり、フルタイムでは働かないパートの方が多いため、賃金水準は正社員が含まれている平均賃金と比べるとかなり低くなると思います。ましてや新規雇用者は職場のノウハウや知識も乏しい新人です。新人をいきなり平均賃金以上の待遇で迎え入れる企業はまずないでしょうから、アベノミクス以降で新たに雇用された100万人の給料は平均賃金を大きく下回る水準であると推測されます。

 したがって、いかに2014年にベアが実施され全体の給与が底上げされたとしても、新たに加わった新規雇用者100万人の賃金が平均賃金を引き下げてしまうため、ベア分を相殺し、結果として2014年の平均賃金は微減となったというわけです。とへいうものの、ベアが実施されたのは確かですので、その影響が皆無なんてことはありません。ベアがなければ平均賃金はもっと下がっていた可能性もあります。

国民の所得総額は増えている

 新規に雇用された100万人が平均賃金を引き下げていることの根拠として、就業者が受け取る給与の総額である「雇用者報酬」の推移(図2)を挙げたいと思います。

⇒【グラフ】はコチラ http://nikkan-spa.jp/?attachment_id=857414

“反アベノミクス”に反論。「国民の所得は増えていない」のウソ「雇用者報酬」については、一応民主党政権時においても増加はしていますが、その増加速度は安倍政権以降により加速しています。

[民主党政権時] 1.25兆円/年 (2009年10-12月期~2012年10-12月期)
[安倍政権以降] 2.72兆円/年 (2013年 1- 3月期~2015年 1- 3月期)

 普通、ショックからの反動による回復は、勢いが最初だけにとどまり、時が経つにつれてだんだんと回復度合いは鈍っていくものです。安倍政権以降の雇用者報酬の増加も、リーマンショックからの立ち直りの影響がまったくないとは言いませんが、それだけでは説明がつかないのも事実かと思います。これは素直にアベノミクスによる効果と見ることができるのではないでしょうか?

 したがって、アベノミクスで国民の給与総額は増えている。この増えた分は、ベアと昇給、そして新規に雇用された100万人の雇用者の所得。平均賃金にその結果が現れなかったのは、比較的賃金水準の低い、新規雇用者100万人の賃金が平均賃金を押し下げたため、ということが説明できると思います。

ボーナスと残業手当を加味すれば平均値でもプラスに

 また、厚生労働省が19日に発表した毎月勤労統計によるとボーナスや、残業手当を含めた2014年度の「現金給与総額」は前年度比0.5%増の31万5984円でした。増加は4年ぶりとのこと。ちなみに冒頭の東洋経済オンラインの記事で取り扱っていた平均賃金は「現金給与総額」ではなく、ボーナスや残業手当などを含まない、「所定内給与」です。

 私は自分のブログではとくに理由がない限り「所定内給与」を使いません。なぜなら、就労者が実際に受け取るのはボーナスや残業代を含めた「現金給与総額」であり、ボーナスなどが含まれない「所定内給与」を使うのはあまり適切ではないと思うからです。「現金給与総額」のほうがより実態に近いためです。

 ベアは当然ボーナスに直接影響を与えますし、アベノミクス以降は人手不足から一人あたりの仕事量が増えているため、残業手当も当然増加しています。したがって、アベノミクスによる給与所得アップの影響を見るのなら「現金給与総額」を扱うほうが適切であると考えます。

 なぜ冒頭に紹介した記事ではあまり実態にそぐわないうえに、100万人の新規雇用者による平均賃金相殺の影響がより強く出る「所定内給与」を用いて、アベノミクスで賃金は増えていないと批判していたのか? なにか恣意的な印象操作の匂いがしないでもありません。

 どうみてもアベノミクスで国民所得は増えています。それはデータを見る限り明らかです。また、今回扱った賃金データはすべて名目値です。新聞やテレビなどで「実質賃金が下がっているからアベノミクスは失敗だ」という声をよく聞くのですが、実質賃金については次回以降の連載にて解説したいと思います。

まとめ
・平均賃金の上昇分は、アベノミクスによる新規雇用者100万人の給与によって相殺されていた
・それでもボーナス、残業手当を含む「現金給与総額」では前年度比0.5%の増加
・就業者が受け取る給与の総額である「雇用者報酬」は増加している
→アベノミクスによって国民の所得は増えている。ベアは効いている

【山本博一】
1980年生まれ。経済ブロガー。ブログ「ひろのひとりごと」を主宰。医療機器メーカーに務める現役サラリーマン。30代子育て世代の視点から日本経済を分析、同世代のために役立つ情報を発信している。近著に『日本経済が頂点に立つこれだけの理由』(彩図社)。4児のパパ

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