経済成長が日本を救う。消費増税は日本を壊す【経済ブロガー・山本博一】
連載24【不安の正体――アベノミクスの是非を問う】
▼2015年度の税収はなぜ増えたのか?
あれ……2015年って増税ありましたっけ?
2016年の予算案をみると、2015年度の税収がなんと、3兆円も増えてしまったことがわかります。消費税の増税は2014年4月からだったので、おかしいですよね。
原因としては、円安による企業業績の回復によって法人税収が増加したことが考えられます。また、就業者数が増え、所得税を収める労働者も増加しています。その結果、所得税収が上振れしたものと思われます。
いま現在、お世辞にも景気がいいとはいえないものの、アベノミクスによる雇用と企業業績の下支えが税収の上振れにつながったのは明白です。
「増税しなくても税収は増える」――これこそが、経済成長による「自然増収」であり、私たちが目指すものです。増税によって税収を増やすなど愚の骨頂であることを、これから証明していきましょう。
▼「安定財源」というコトバに騙されるな
「今後少子高齢化で膨らみ続ける社会保障費の財源確保が急務」
「財源には景気に左右されない安定財源である消費税が最適だ」
これが財務省における増税の大義名分です。確かに、消費税が安定財源であることはまちがいありません。
財務省HPに掲載されている「消費税引き上げの理由」にあるグラフ「我が国の税収の推移」を見てもそれは明らか。景気の後退期(グレーの網掛け部分)において、法人所得税は大きく税収を落としているのに対し、消費税の税収はぴくともしていません。
⇒【グラフ】はコチラ https://nikkan-spa.jp/?attachment_id=1030042
消費税が景気に左右されないのは確かです。私もケチを付けるつもりはありません。しかし、「安定財源だから社会保障の財源に最適」というのはさっぱり理解できません。
よく考えてほしいのですが、社会保障費は、年1兆円のペースで今後も増えると言われています。それを景気に左右されない安定財源、つまり「景気がよくなっても税収が増えない」消費税でどうやって賄うというのでしょうか?
消費税1%の税収は約2~2.5兆円です。つまり、年1兆円のペースで増え続ける社会保障費を消費税で賄うためには、年0.5%のペースで消費税率を永遠に上げ続けねばなりません。
皆さん「安定財源」というコトバに騙されていませんか? 「消費税を社会保障の財源に」は、消費税率を上げ続けたい財務省が仕組んだ罠です。
恒常的に消費税率を引き上げ続けて、日本経済が持つわけがなく、社会保障のためとは言ってもその前に日本経済が崩壊してしまっては元も子もないでしょう。
▼自然増収こそ社会保障の財源にふさわしい
「『自然増収』は一時的なもので、財源のアテにはできない」と主張する政治家や経済評論家は数多くいますが、何を根拠にそのようなことを言っているのでしょうか。
安倍政権が発足した2012年度租税税収と2015年度の税収(予想)を比べると5.73兆円も上振れしています(消費税分を除く)。
年間約2兆円の税収増です。消費税増税をしなくても、自然増収だけで年1兆円増える社会保障費はカバーできています。これではだめなのでしょうか?
そもそも消費税で社会保障の財源を確保しようとすること自体がまちがっています。社会保障は働けない人や、収入のない高齢者などの弱者を救済するための政策ですから、所得の高い生活に余裕のある人から多めに税金を取り弱者に分配するのが基本です。
しかし、消費税はその弱者に負担率が重く、逆進性の高い税制です。弱者から税金をむしりとって、弱者に分配する。バカバカしいの一言です。
社会保障費が年々増加し続けているのは何も日本だけではありません。では他国は日本と同様に、消費税で社会保障費の財源を確保しているのでしょうか?
日本はGDPの成長がかれこれ20年もストップしているので「経済成長」が特別なことのように感じてしまうのですが、これは日本が異常なだけです。他国は当たり前のように経済成長して、当たり前のように「自然増収」しています。
⇒【グラフ】はコチラ https://nikkan-spa.jp/?attachment_id=1030048
要するに、日本が経済成長できないのは、ただ単に政府日銀の経済政策が今までまちがっていただけにすぎません。1997年の消費税率引き上げ、2006年の金融引き締め。これをやって経済成長できるほうが不思議です。
つまり日本は、景気を悪化させるだけの消費税増税を止め、金融緩和、つまりアベノミクスを継続すれば、他の国と同様に当たり前のように経済成長し、自然増収することは可能です。
他国にできて日本にできない理由はありません。経済を不安定化させる「消費税増税」こそ、財源のアテにできません。
■まとめ
・2015年度の税収は増税しなくても3兆円も上振れ
・年1兆円増える社会保障費を消費税でどうやって賄うのか?
・社会保障費を消費税で賄う場合、税率を引き上げ続けなければならなくなる
・消費税は逆進性が高い。社会保障の財源として不適当
・経済成長による「自然増収」こそ社会保障の財源にふさわしい
【山本博一】
1980年生まれ。経済ブロガー。ブログ「ひろのひとりごと」を主宰。医療機器メーカーに務める現役サラリーマン。30代子育て世代の視点から日本経済を分析、同世代のために役立つ情報を発信している。近著に『日本経済が頂点に立つこれだけの理由』(彩図社)。動画配信番組「チャンネルくらら」の『ゆる~く学ぼう!日本経済』に出演中。4児のパパ
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