“ステロイド疑惑”とWWEバッシング――フミ斎藤のプロレス講座別冊 WWEヒストリー第118回
“エンターテインメント・トゥナイト”にゲスト出演したブルーノ・サンマルチノは、「WWEのドレッシングルームに行くと、注射針が床にころがっている」というショッキングな発言で視聴者を驚かせた。
ビンスはブルーノのコメントに敏感に反応し、それから数日後にみずからも同番組に出演し、ホーガンをはじめWWE契約選手全員がドーピング検査を受けていること、ホーガン自身も検査結果の公表を望んでいることを力説した。テレビ局サイドにとってはビンス自身による反論は願ってもない展開だった。
“スーパースター”ビリー・グラハムは、ステロイド常用の後遺症によるガン発症を理由にWWEに対して損害賠償を求める訴訟の準備をすすめていた。ホーガンのかつてのライバル、デビッド・シュルツは“暴露本”を出版をもくろんでいた。WWEの“ステロイド疑惑”とそのサイドストーリーはあっというまにタブロイド・メディアの標的にされた。
“世紀の一戦”としてプロデュースされたホーガン対リック・フレアーのシングルマッチは、11月のマディソン・スクウェア・ガーデン定期戦では1万5000人の観衆を動員したが、12月の定期戦は1万1000人にダウン。サンフランシスコ、アトランタでのビッグショーの観客数は5000人クラスに低迷した。
“ステロイド疑惑”はボディーブローのように興行収益に影響を与えはじめた。しかし、それはWWEを襲うスキャンダルの“雪崩現象”のほんのプロローグでしかなかった。(つづく)
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文/斎藤文彦 イラスト/おはつ
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斎藤文彦
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