ビンス無罪“ステロイド裁判”エピソード09=パット・パターソンの苦悩――フミ斎藤のプロレス講座別冊WWEヒストリー第162回
――あなたが巡業部長だったころ、ジョージ・ザホリアン医師が選手たちにステロイドを売っているという情報を耳にしたことはありましたか。
「ウワサは耳にしていました」
――その事実を知っていましたか。
「ウワサは耳にしていました」
――その事実を最初に知ったのはいつごろでしたか。
「2、3年まえまでは知りませんでした。80年代の終わりごろですね」
――あなたは選手たちが列をつくってザホリアン医師のいる医務室に入っていくのを見ていたはずです。
「(選手たちが)血圧を測ってもらうため、です」
――ドクターが選手たちにステロイドを売っている事実を知っても、副社長のあなたはそれをビンス・マクマホンに報告しなかったのですか。
「ステロイドは正しく使えば安全な薬、という認識でした。それが違法だということをわたしは知らなかった。ビンスとわたしがステロイドについて話し合ったことはありません」
ここでオシェー検事は事件の“物的証拠”として1989年8月7日付のメモ書きをポケットから取り出した。
――リンダ・マクマホン社長(当時)からあなたへの社内メモです。いちばん上にはコンフィデンシャル=機密とある。メモの内容を要約すると①ビンス・マクマホンはあなたに「(ザホリアン医師に対して)気をつけるよう伝えること」と命令した②この件についてビンス・マクマホンとリンダ・マクマホンが話し合った③タイタン・スポーツ社コンプライアンス部のアニータ・スケールス部長がザホリアン医師を試合会場から出入り禁止にしようとしたところ、あなたがそれを阻止した、とあります。
「いま初めてそのメモを見ました」
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