近未来の“超大物”ハンターがデビュー ――フミ斎藤のプロレス講座別冊WWEヒストリー第190回(1995年)
WCWによる引き抜きの“魔の手”はWWEのいちばんディープなところまでおよび、1996年にはトリプルHにレスリング・ポリティクスをレクチャーしたナッシュ、ホール、ウォルトマンの元祖ウルフパックの3人が相次いでWCWに電撃移籍。アメリカのプロレス史の大きなチャプターとなる“ロウ”対“ナイトロ”の月曜TV戦争が本格化した。
1996年から1997年にかけてのWWE世界ヘビー級王座をめぐる闘いは、“ヒットマン”ブレット・ハートとショーン・マイケルズのふたりのパーソナルな闘争へと変貌をとげ、この長編ドラマは1997年11月の“サバイバー・シリーズ”における“モントリオール事件”でひとつの決着をみることになる。
キャリア2年の新人だったトリプルHは、全米ツアーの移動中のドライバー役をつとめながら、クリックがハンドリングしたバックステージのナマの政治ドラマ、WCWからの主力選手の引き抜きの“魔の手”、ショーンとブレットの人間関係とそのゆがみのようなものをいちばん近くで目撃することになる。
英国貴族の末えいを名乗るハンター・ハースト・ヘルムスリーに用意されていたポジションはとりあえず第1試合のシングルマッチだったが、試合をやっていないときのトリプルHは、クリックによる“集中講義”のおかげで敵と味方の見分け方、勝つことと負けることのそれぞれの意味、話すべきタイミングと沈黙するべきタイミング、“プロレスの力学”のなんたるか、を短期間で身につけてしまったのだった。(つづく)
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文/斎藤文彦 イラスト/おはつ
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斎藤文彦
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