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定時で帰る新人ホステス美琴――連続投資小説「おかねのかみさま」

みなさまこんにゃちは大川です。

『おかねのかみさま』54回めです。

きょうも六本木SLOW PLAYで書いてます。

※⇒前回「グェ」


〈登場人物紹介〉
健太(健) 平凡な大学生。神様に師事しながら世界の仕組みを学んでいる
神様(神) お金の世界の法則と矛盾に精通。B級グルメへの造詣も深い
死神(死) 浮き沈みの激しくなった人間のそばに現れる。謙虚かつ無邪気
美琴(美) 普通の幸せに憧れるAラン女子大生。死神の出現に不安を募らせる
美熟女(熟) 美琴が働く銀座の高級クラブ「サーティンスフロア」のママ
村田(村) 健太が師と崇めるノウサギ経済大学の先輩。元出版社勤務
ママ(マ) 蒲田のスナック「座礁」のママ。直球な物言いが信条
沼貝(沼) 杉ちゃんの先輩ベンチャー経営者で株主。脅迫事件の対処に勇躍
薄井(薄) 「アリファン」創業メンバー。アリンコの著作権に3億円要求
学長(学) 名前の由来は「学長になってもおかしくない歳のオッサン」の略

〈第54回 終電〉
「よし。それじゃあ今月末から、君は毎月ワシに1万円を返すこと。いいね」

「はい!ありがとうございます!」

「ジジイ…あのな…こいつが馬鹿のまま過ごす時間が8年くらい延長されただけなんじゃねぇのか?」

「まぁまぁ。えーと、ところで健太くん、さっきバイナリーオプションのソフトのせいで追証払わないといけないって言ってたね?」

「はい…明後日までに…」

「ふむ。ちょっとその画面みせてみ」

「はい…こちらです」

「ふんふん。ふん。ふーん。ほー。あー、やっぱりねーー」

「な、なんですか?」

「健太くん。これ払わなくていい」

「え????」

「あのね健太くん、バイナリオプションは初心者向けに非常に簡素化された投資行為で、馬鹿でもできる丁半博打みたいな投資なんじゃが、不足金の入金や追証を払い込むということは一切ないんじゃ。ほれ、ここよく見てみ」

「ここですか…?バイナリ…おぷしょん?」

「いや、もっとよく見てみ」

「!!!!!パイナリ!!!バイナリじゃなくてパイナリって書いてある!!!」

「そうじゃな。このサイトは、君みたいに追い込まれるとすぐに『グェ』って言うカモ向けに作られた、入金督促特設会場じゃ」

「と…特設会場…」

「そう。つまり、君みたいなカモを追い込んだらなんとかかき集めて払ってくれそうな金額を表示してるだけの画面じゃ。確認もせず、焦らされたら言われた通りにグェグェ言いながら払い込む連中のための画面じゃ」

「はー…」

「学長すごい。なんかドラマみたい」

「ぬふふふふふふ」

「で、でも、僕これ払わなかったらなんか怖い人たちが家庭訪問に来たりしませんか?」

「あるかもねー」

「いやぁですよぉおおぉお…」

「見に行く。なぁママ」

「楽しみね。缶チューハイ持って見に行くわ」

「ま、だいじょぶじゃろ。ここまでわかりやすいワナ作ってるところは自分たちも目立ったら捕まるからな。なんか言ってきたら『金融庁に報告します』と伝えといたらいい」

「は、はい…」

「と、いうことで、健太くん、お金いらなくなったね」

「ありがとうございます…ほんとになんとお礼をしたらいいやら…」

「いやいやお礼なんて、そんな、いいんじゃよ。毎月1万円ずつの支払い、がんばってな」

「え!!!!???」

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同日 23:20 銀座 サーティーンスフロア

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