フランス原発で日本製の欠陥部品が大問題。国内原発17基にも使われている!?
具体的に、どのような問題が日本鋳鍛鋼の鋼材にあるのか。バーニー氏が解説する。
金属材料学が専門の井野博満・東大名誉教授も、炭素を多く含む鋼材が原発に使われることの危険性を懸念している。
「今回、問題になっている原発部品用の鋼材について『強度』という言葉がよく使われますが、より正確に言うと『破壊靭性』です。炭素を多く含む鋼材は硬くなりますが、その分脆くもなります。例えるならば、包丁などの刃物がそうです。硬くてよく切れますが、破壊靭性があまりないため、使っているうちに刃こぼれしてしまう。反対に、含まれる炭素が少ない鉄は、加わった力に対してのねばり強さ、つまり破壊靭性がある。なぜ原発の部品で破壊靭性が必要なのかというと『熱衝撃』、つまり急な温度の変化に耐えるためです。例えば、熱したガラスのコップに冷たい水を急に注ぐとパリンと割れてしまうことがあります。これと同じように、何らかのトラブルで原子炉に緊急冷却水を流し込まなければいけない場合に、原子炉の部品は急激な温度変化に耐えられる必要があります。ですから、炭素を多く含む鋼材でできた原子炉は緊急冷却の際の熱衝撃でダメージを負い、重大な事故を引き起こす可能性があるのです」
「’95年から’06年にかけて日本鋳鍛鋼がフランスの原発に供給した鋼材には、基準値である0.22%を超える炭素が含まれており、特にトリカスタン原発1号機と3号機の蒸気発生器の鋼材は、0.39%という基準値の1.7倍もの高い濃度の炭素が含まれることが発覚しました。一般的に炭素濃度が濃い鋼材は、壊れやすくなります。こうした異常が見つかった鋼材が使われている部品は、いずれも『クラス1』に分類されるもの。つまり原発の安全機能の中で最も重要とされる部品です。だからこそ原発を停止させて点検を行う必要があるのです。私たちは、英国の原子力コンサルタントのジョン・ラージ博士に依頼し、この問題について分析をしてもらいました。ラージ博士はその報告書の中で、今回の問題で停止した原発の運転再開には、蒸気発生器を原発内から取り外し、新たなものに取り替える必要があると指摘しています。また、それは大変困難な作業で、時間や1か月あたり約1億5000万ユーロ(約183億円)もの莫大なコストがかかることや、新たな蒸気発生器をいくつも作る生産能力があるか、という点も同時に指摘しています」
そのまま放置すれば破局的事故の可能性も
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