原発をすべて止めると国民一人あたり3万円の負担増に【藤沢数希氏】
◆マネーな人々 今週の銭格言
【選者】人気ブログ「金融日記」管理人 藤沢数希氏
年末年始に福島県と浮島・扇島太陽光発電所、かわさきエコ暮らし未来館を観光したという藤沢数希氏。稼働し始めたメガソーラーの発電量から、「どんなに楽観的に見ても、太陽光発電が主要な電力供給源となるのは前途多難」と語る。
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日本でも「脱原発」でずいぶん盛り上がった自然エネルギーだが、そろそろブームも終焉だろう。そう考えると面白いのは原発メーカーだ。東芝や日立などの原発メーカーは、東電の陰に隠れてほとんどバッシングを受けなかった。
日本で原発の新規建設が止まったとしても、今後、狂ったように原発を建設し続ける中国では、東芝の最新型原発「AP1000」が採用されている。そもそも原発ビジネスは核燃料を売ったり、定期点検のようなメンテナンス業務で儲かるのである。さらに原発事故によって、廃炉や除染でも儲かることになる。
日本でも遅かれ早かれ原発は再稼働することになるだろう。なぜなら、原発をすべて止めると、その分を火力発電所で補うために年間4兆円もの化石燃料費が余分にかかるからだ。これは国民一人あたり3万円だ。原発は発電しなくてもランニングコストがかかるし、全体の発電コストの中でウラン核燃料の分は微々たるものなので、原発を止めてその分を火力でとなると、発電コストが二重にかかる。ローンで買った自宅を空き家にして賃貸に住むようなものだ。
政治家は、確かに原発を再稼働させることは嫌だろうが、国民に電気代を上げさせてくれと頼むのはもっと嫌なのだ。みんな、自分の懐が痛む話は大嫌いだから。
【今週の数字】
浮島・扇島太陽光発電所の年間発電量
2100万kWh/年
東電と川崎市の共同で建造された扇島太陽光発電所が昨年12月に稼働。浮島太陽光発電所と合わせ国内最大のメガソーラーで、年間約2100万kWhを発電する。浜岡原子力発電所のわずか数時間分の発電量だ
【藤沢数希氏】
欧米の研究機関にて、計算科学、理論物理学の分野で博士号を取得。その後、外資系投資銀行に転身。主宰するブログ「金融日記」は月間100万PV、ツイッターのフォロワーは6万人に及ぶ。最新刊『日本人がグローバル資本主義を生き抜くための経済学入門』が発売中物理学研究者、投資銀行クオンツ・トレーダー職等を経て、作家・投資家。香港在住。著書に『外資系金融の終わり』『僕は愛を証明しようと思う』『コスパで考える学歴攻略法』などがある
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