バーベキューで食中毒に。焼いた友人を訴えられるか?
空気がじめじめする梅雨は有害菌が活発に増殖する、食中毒に注意すべきシーズンだ。実際に外食で食中毒に遭遇したときはどう対処すればいいのか。治療費や慰謝料などいざというときの注意点について、パロス法律事務所の櫻町直樹氏に聞いた。
「まずはすぐに付近の病院に行き、医師の診断書をもらってください。また、お店のレシートもきちんと保管しておきましょう。診断書やレシートがないと、食中毒の証明がとても難しくなってしまうからです。また、記憶が鮮明なうちに何をどこでいつ食べたのか数日分、書き出しておくことも食中毒の原因が何かを裏付けるのにいい」
食中毒患者を診断した医師は食品衛生法に基づき、保健所に届け出る義務がある。しかし、裁判になった場合の食中毒と店の食事との因果関係は原則、賠償請求する側が立証しなければならないのだ。さらに、診断書をもらえたとしても内容によっては訴訟のメリットがほとんどないという。
「’11年の焼肉酒屋えびすの集団食中毒事件(生ユッケを食べた5人が死亡、200人以上が被害に)のように深刻な被害が生じた場合は賠償金も数千万円に上ることもあります。一方、下痢が数日間続くといった比較的軽い症状で済んだ場合、休業損害や治療費、慰謝料などを合わせて、5万~10万円程度でしょうか。費用対効果を考えれば、訴訟ではなく訴訟外の交渉で解決を目指すのがいいです」
注意したいのは、友人たちと身内で開いたバーベキューなどのパーティだ。焼き手などが責任を追うこともあるというのだ。
「十分に火が通っていない生焼けの豚肉や、夏に室温で長時間放置した野菜サラダを『大丈夫だろう』と思って出したのが原因で食中毒になった場合、一般に広く知られている食品取扱い上の注意を守らなかったことで、提供者に損害賠償責任が発生することもあります」
とはいえ、こちらの場合も賠償金は数万円程度。食中毒は警戒し、予防するのがベストのようだ。
【櫻町直樹氏】
パロス法律事務所代表。‘75年、石川県金沢市生まれ。’09年、弁護士登録。企業法務から一般民事、ベンチャー企業の法的支援まで幅広い領域の事件に携わっている
取材・文/永田明輝
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