“訪問者”ビガロが目撃した天龍、大仁田、そして北尾――フミ斎藤のプロレス読本#070【バンバン・ビガロ編エピソード5】
―[フミ斎藤のプロレス読本]―
199X年
ドレッシングルームのテーブルの上にセッティングされたTVモニターには格闘家・北尾光司の姿が映し出されていた。バンバン・ビガロは一瞬、わが目を疑った。
いつか東京ドームで闘ったスモウ・レスリングの元グランド・チャンピオンのキタオが空手着を着てリングに立っていた。
「ヘイ、テンルー。これ、キタオじゃないか? キタオだろ?」
ビガロは天龍源一郎の顔をのぞき込んだ。髪形がちょっと変わったし、だいぶ太ったみたいだけど、たしかにキタオだ。
「おい、どうしちゃったんだ、こいつ? いつからカラテ・ギミックになったんだ? いつもユーのリングでやっているのかい?」
天龍は“まあ、しようがねえだろ”というゼスチャーをしてみせた。ビガロはいっぺんでテンルーの人のよさというか、面倒見のよさを認識した。
そういえば、ドレッシングルームのなかをうろうろしているアースクェイクもウォーロードも厳密にいえばこの団体のレスラーたちではない。テンルーは、宙ぶらりんになったボーイズを自分のリングで辛抱づよく使っている。
天龍と大仁田厚とビガロの即席トリオがなんとなくうまくいってしまったのは、3人がみんなオトナの不良少年たちだったからだろう。
ビガロは初対面のオーニタのことを“テネシーの王様”ジェリー・ローラーのようなタイプととらえ、じっさい、大仁田はビガロがイメージしていたとおりの不良っぽいプロレスをしていた。
天龍が“お客さん”の大仁田とビガロを立てるようなそぶりばかりするので、ビガロもまたビッグショーを仕切るボスの気持ちをくんで思いっきりよそいきのプロレスを心がけた。
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