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レジーねえさんは勝つと決めたらちゃんと勝つ人である――フミ斎藤のプロレス読本#133[ガールズはガールズ編編エピソード3]

 このあいだの後楽園ホールの試合で、レジーねえさんはアジャ・コングの後頭部に“延髄パンチ”をぶち込んだ。ほんとうはカッコよくクローズラインを決めようと思ったのに、タイミングが合わなくてアジャ様の頭をガツンとやってしまった。  “延髄パンチ”なんて技はこの世にない。「われながらあれは下手くそだった」といってレジーねえさんはガッハッハと笑う。プロレスはやってもやってもむずかしいスポーツなのだ。ここでおしまい、というゴールがない。  でも、プロレスをやっているうちにしかできない“ほかのこと”もある。コンディションを維持して、ケガにさえ気をつけていれば、あと何年かはリングに上がることができるだろう。  総合格闘技はきっといましかできない。レジーねえさんは35歳。プロレスをつづけるのは、いちばん長くても1999年の誕生日までと心に決めている。  全日本女子プロレスのボスたちはみんな元ボクサーだ。“アルティメット”が世に出るずっとまえからここのリングでは“格闘技戦”という名の“アルティメット”がおこなわれていた。あのメドゥーサもアジャ様とキックボクシングの試合をやったことがあった。  レジーねえさんは、プロレスではないなにかとして“U★TOPトーナメント”と向き合おうとしている。カッコよくいっちゃえば、アスリートとしての最期の賭けである。  優勝賞金の2万ドル(約260万円)が手に入ったら、ずっとまえから欲しかったハーレーダビッドソンでも買おう。もちろん、ハーレーが買いたくて“なんでもあり”をやろうとしているわけではない。  でも、自分自身へのごほうびを考えておかないと、わざわざ檻のなかなんか入る気にはなれない。  それでも、状況はマザー・ファッキン・バッド。きっと、相手の顔を何発かぶん殴らなければならなくなるだろう。できれば、スリーパーホールドかなにかできれいにギブアップ勝ちをキメたい。  レジーねえさんは、なんでもいちどはトライしてみる人。やってみたらクセになっちゃった、のくり返しなのだ。 ※文中敬称略 ※この連載は月~金で毎日更新されます 文/斎藤文彦
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