更新日:2022年12月14日 01:18
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信号待ちは“休憩”あつかい…人手不足に嘆く運送業界のドライバーたち

1月30日の厚労省発表によれば、’17年12月時点の有効求人倍率が、1.59倍に達したという。バブル期のピークにあたる’90年7月の数値(1.46倍)を9か月連続で超えており、この勢いがやむ気配はなく、深刻な求人難が現在のビジネス界を覆っているのだ。同僚が次々と抜けていき、さりとて新人が入ってこない環境下で、残された労働者たちの負担は増す一方だ。悲鳴をこらえつつ今日も現場に出る彼らの、生の声に迫る。 この春、マジで人が足りない

運送業界がハマる負のスパイラル

 通販全盛となった物流の現場では、ドライバー不足が深刻化。そのしわ寄せは荷物の遅配という形で我々の生活を脅かすまでになっている。ヤマト運輸で事務を担当する女性は、現状をこう語る。 「昨年の残業代未払い問題で、職場環境は一気にホワイトになりました。ドライバーも運転時間の上限が厳格に決まっており、サービス残業は絶対に禁止。違反しようものなら大目玉をくらいます。一方、依然としてドライバー数は圧倒的に不足しているので、労働環境が改善されるほど反比例して荷物はたまっていく。こうした現状は、すべての大手の物流、運送会社に共通していると思います」  人手不足が解消されぬまま労働環境の急激なホワイト化が進んだ結果、通常業務にさまざまなひずみが生まれているという。 「ドライバーが足りない&労働時間オーバーで仕事が回らなくなると、近隣の営業所から規定の労働時間に達していないドライバーを探して埋め合わせるんです。でも、この作業がパズルのように難解(苦笑)。ドライバーよりも管理して差配する事務方の負担が、ここ半年で3倍くらい増えました」

半数が50代後半以上。高齢化が進むドライバー

 ただ、残業規制が入った大手企業はまだマシで、中小規模の運送会社はさらに悲惨だ。都内で12年間運送ドライバーとして働き、昨年からタクシー運転手に転職した内村宏一さん(仮名・39歳)は泥沼のような日々をこう振り返る。 「月曜から土曜まで朝5時出社で帰宅は22時。配送スケジュールは細かく決まっており、休憩や昼休みはなし。さすがに会社に文句を言うと『信号待ちや渋滞で停車してる時間を合わせたら1~2時間になるから』と返されました」 信号機 昼食はもっぱら移動中におにぎりやサンドイッチを頬張る。「ここ10年、平日昼間に箸を握ったのは数えるほど」だとか。 「実はドライバーの数自体はいるんですよ。元いた会社も200人はいました。でも、その半数以上が50代後半から60代のおじいちゃんたちで、体力がないから主力である工業製品を担当できず、引っ越し会社から回ってきたワンルーム案件など楽な仕事ばかり。その分、僕ら現役世代にキツい仕事が集中するんです」
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フレッシュな人材はまったく定着しない
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