恋愛・結婚

ポケベル時代の失恋トラウマ。愛してないのに「アイシテル」を連投され…

彼女の隣には、なぜか同年代の男が…

 そんな深夜デートを連日繰り返して1か月ほど。いつものように駅で待っていると……。 「彼女が駅の階段を降りて来ました。でも、視線は僕にない。ものスゴい違和感。少し奥にいる同年代の男を見ているのに気付き、僕はその場を急いで去りました。大好きだからこそ敏感になれたんです」  考えないようにしたが涙が止まらなかった。1人で公園のベンチに座り、ひたすらにタバコを吸っているとメッセージが届く。 「ゴメン マエカレキテタ マタアシタキテ」 「アイシテル」  色々とツッコムべきところを、Nさんは嬉々として自分の勘違いだったと思い込んだ。 「変に突いて嫌われる方が怖くて。また会えるなら大抵のことに目を瞑れました」  翌日、自分からは何も聞くまいと心に決めて、深夜の駅へ。すると、再び前彼らしき男の姿が。 「話しかけられました。『お前、I子のなに?』って。なんでもないとだけ答え、無言で帰路につきました」  情けないやら悲しいやら、色々なマイナスの感情が渦巻く寝床で、またメッセージを受け取った。 「オコラナイデ ハナシサセテ」 「アイシテル」  胸が良い意味で高鳴り、自分のせっかちさを呪った。 「オコッテナンカナイ」  翌晩、彼は性懲りも無く駅へ向かった。 「少しはムッとした表情でもしておかないと舐められるかな? なんて呑気に考えながら駅前に立っていました」  背後に人の気配を感じた瞬間、腰あたりに強い衝撃を受けて前のめりに跪く。 「テメェ、無理やりヤッたんだってな!!」  すぐに状況を悟ると弁明もする気にもならず、ただ無抵抗に殴られることを選んだ。 「ボコボコです。なんでしょうね。もう“無”の境地なんです。ただ、彼女は明らかに僕を選んでいないって事実だけがショックで」  鼻が折れ、開きっぱなしの蛇口のように血が出続けた。しばらくして彼女がやって来た。「え、ちょっとあんた何してんの?」が、血まみれのNさんに放った第一声。何も返す気にならず、ただ鼻を押さえながら自転車に跨がったという。 自転車 その後、数週間は恒例の「アイシテル」メッセージを受信したが、もうNさんが応じることはなかった。そのときの心境を「嫌いになったわけではなく、愛されていないと気付いただけ」と振り返る。 「実際は長いこと好きでしたよ。好きって感情は理屈じゃないんですね。ただ、理屈で抑え込むことができるだけで」  この失恋を、Nさんは独身時代によく思い出していたそう。 「教訓的な意味で、心の片隅にいつも置いていました。深追いせず、盲信せずの心構えというか……。世間ではトラウマと呼ばれるものかもしれませんね」<取材・文/金井幸男> ― オレ史上最悪の恋愛体験 ―編集プロダクション勤務を経て、2002年にフリーランスとして独立。GETON!(学習研究社)、ストリートJACK(KK ベストセラーズ)、スマート(宝島社)、411、GOOUT、THE DAY(すべて三栄書房)など、ファッション誌を中心に活動する。また、紙媒体だけでなくOCEANSウェブやDiyer(s)をはじめとするWEBマガジンも担当。その他、ペットや美容、グルメ、スポーツ、カルチャーといった多ジャンルに携わり、メディア問わず寄稿している。
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